第10話:阿蘇の誇りと黄金の学生
【前回までのあらすじ】
九龍が放った『隕石の剛速球』を、武は再錬成された黄金のバットで真っ向から打ち砕いた。
衝撃波が庭を駆け抜け、打球は阿蘇の夜空へと消える。決着の瞬間、静寂が蔵野家を包み込む。
バットを振り抜いた姿勢のまま、武は動かなかった。
焦げた大学ジャージの袖から、青白い蒸気が「ヒュウッ」と低い音を立てて漏れ出している 。
「……はぁ、はぁ……」
まいのタブレット上の『マブイ残量』は、わずか数パーセントを示して点滅していた 。だが、武の赤い瞳は、依然として冷徹な光を失っていない 。
対峙する九龍は、愛機**『重弓騎兵』**の上で、信じられないものを見たという顔で固まっていた 。
「……ば、化け物か。俺のマグマを、力ずくでねじ伏せるとは」
九龍はゆっくりと騎馬を降りた。大鎧を鳴らし、武の前で足を止める。
一触即発の空気。だが、九龍が口にしたのは意外な言葉だった。
「見事たい、蔵野武。あんたのマブイ、本物だった」
九龍は懐から、一通の焦げた書状を取り出した。
「俺は財団の刺客じゃなか。阿蘇松井家が当主より、『黄金のマブイを持つ者』の器を確かめるよう命じられて来ただけたい」
「……器だと?」
「阿蘇の山が、鳴り出しとる。財団の魔の手が、古の機獣たちを呼び覚ましとるとよ。俺たちと一緒に、財団を……『コアゼロ』を叩かんね?」
武は、白熱していたバットをゆっくりと下ろし、いつもの大学生らしい静かな口調で答えた。
「……悪いが、俺はただの学生だ。平和に野球がしたいだけなんだよ」
その背中には、改造人間としての宿命を背負いながらも、日常を守ろうとする「孤高のヒーロー」の孤独な影が重なっていた。
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