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第1話 儚げな少女は期間限定です!


〜9年前〜


 大雨の中、林の中を走る馬車を3人の大柄な女冒険者達が自らの足で追いかけていた。


 馬車に乗っている男「何て速さだ!こっちは馬車なんだぞ!?」


 ピンク色の長髪の女が笑いながら男の真横に付いて並走をした。


 オリエッタ「アハハハハ!!罪人には即!◯んでもらいますわぁ〜!」


 罪人「ヒイッ!?」


 クロエ「ちょっと!?アイツらの仲間や捕まっている子供の情報聞き出さなきゃでしょ!?」


 黒髪のポニーテールの女が焦りながら言った。


 マヤ「それならアタシに・・・任せなぁ!!」


 そう言って金色の短髪の女は、馬車を後ろから掴んで引っ張った。


 罪人「ば、馬鹿な!馬車だぞ!?人の手で止められる訳が・・・!?」


 みるみるうちに馬車の速度は低下していき、ついには完全に止まった。


 罪人「ハ、ハハッ。」


 男は観念したのか、天を仰いで放心状態になっていた。 


 クロエ「さぁ、あんたの仲間と捕まっている子供達の居場所を吐いてもらうよ。」 


 罪人「ハハッ。」


 男は、天を仰いだまま微動だにしない。


 クロエ「ふーん、話したくないんだって。どうする?」


 そう言ってクロエは、目線を後ろに向けた。そこには、メトロノームのように首を高速で左右に動かして首を鳴らしているオリエッタがいた。


 罪人「ヒィィ!?ば、化け物・・・!分かった!話すから命だけは・・・!」


 クロエ「懸命な判断だね♡」


 クロエはにっこりと笑った。クロエ達が男を拘束している間にマヤは、馬車の後ろの扉を開けた。そこにはボロボロの布を着た茶髪のショートカットの少女がいた。この少女が当時7歳のクルミである。


 マヤ「オイ!アンタ達!子供が一人捕まっているよ!」


 少女は3人を目の前にしても、膝を抱え込んで座ったまま目線を上げようとはしない。


 マヤ「もう大丈夫だからね。アンタ、お父さんとお母さんは?」


 茶髪の少女「・・・いない。」


 少女は小さい声で聞こえた。


 マヤ「・・・そうか。じゃあ、自分の名前は分かるかい?」


 茶髪の少女「・・・名前...ない。」


 マヤ「そうかい。じゃあとりあえずうちに来な。お腹も空いているだろうし、お風呂にも入りたいだろう。2人とも、少し時間かかるけどこの馬車で帰ってもいいかい?」


 クロエ「やったぁ~!、帰りはマヤが馬車の御者をしてくれるって!」


 オリエッタ「さぁ、家に着くまで3人でおねんねしましょうね〜」 


 2人は少女に話かけながら言った。


 マヤ「クッ!アンタたち、覚えていな!この借りは必ず返すからね!」


 クロエ・オリエッタ「こわぁーい♡」


 数時間後、日が完全に沈んだ頃にマヤ達は街の門の前に着いた。王都から離れた街だが、直径1km程ある大きな都市だ。


 門番「お疲れさん!おや、馬車に乗っているなんて珍しいねぇ。」


 マヤ「奴隷商人を潰すクエストだったんだが、女の子が荷台に捕らえられていたから馬車で一緒に帰ってきたんだ。」


 門番「もしかして、アンタの横に転がっているミイラみたいのは奴隷商人か?」


 マヤ「ああ、そうだよ。」


 罪人は体をねじって何かを訴えかけているが、包帯でぐるぐる巻きにされていて、呼吸以外何も出来なかった。


 門番「念の為、荷台も見せてもらうがいいか?」


 マヤ「もちろん、構わないよ。」


 門番が荷台を開けると、静かに眠っている少女とイビキをかきながら爆睡している大柄の女2人が横たわっていた。


 門番「・・・ずいぶんと...大きな少女だねぇ。」


 マヤ「・・・すまない、お恥ずかしいところを見せた。」


 マヤは、顔を赤らめながら言った。


 門番「リーダーってのは大変だなぁ・・・」


 マヤ「あぁ!まったくだ!」


 そうして、マヤは門番に奴隷商人を引き渡した後、生温かい目で見送られた。


 しばらく街を馬車で進むと、マヤは自分の家の前で馬車の荷台を開けて、少女を優しく起こした。


 マヤ「ほら、家に着いたよ。自分で歩けるかい?」


 少女は、眠そうな目を擦りながら荷台から出て立ち上がった。


 マヤ「いい子だ...ほら!アンタ達!いつまで寝てんだい!さっさと起きな!!」


 クロエ「ウ~ン、もう少し優しく起こしてよ〜」


 オリエッタ「ふゎぁ〜。よく眠れたわぁ。」


 マヤ「そりゃぁ、よく眠れただろうよ。なんせ門番が荷台を開けてもイビキかいて寝てたんだから。今更ぶりっ子したって無駄だよ!」


 2人は顔を赤らめて、恥ずかしそうにした。それを見てご満悦のマヤは、ニヤけながら言った。


 マヤ「今日はもう遅いから報告は明日にしよう。アンタ達はどうする?ウチでご飯食べていくか?」


 クロエ「もっちろん!マヤのご飯はサイッコーだからね!」


 オリエッタ「私も頂こうかしら♡」


 そうして、4人はマヤの自宅に入った。先程まで目線が常に下を向いていた少女は、マヤの家の中をキョロキョロと見渡した。


 マヤ「よし!じゃあアタシがご飯作っている間にこの子をお風呂に入れておいてくれ・・・あれ?あの子はどこ行った?」


 クロエ「おかしいわね・・・家に入って来た時は一緒だったんだけど・・・」


 オリエッタ「あらあら〜、あの子ったらもう一人で先にお風呂に入っているみたい〜。」


 マヤ「な・・・なんて図々しい子なんだい・・・!さっきまでそんな素振り一切見せなかったのに。」


 クロエ「ま、まぁ、思ったより元気そうで良かったじゃない!それに姪っ子が置いていった部屋着もあったじゃない。きっとサイズもぴったりよ。」


 マヤ「そ、そうだね...ほ、ほら、アンタ達も先にお風呂に入りな。」


 クロエ「そうしようと思ったんだけど私達は今日の内にギルドに報告に行くわ。あの子は大丈夫そうだし、馬車の御者のお礼も兼ねて。」


 オリエッタ「そうねぇ、ギルドの報告が終わる頃にはご飯も出来ているだろうし。」


 マヤ「そうかい。じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうよ。」


〜そして1時間後〜


 オリエッタ「ハァ〜、お腹ペコペコだわぁ〜。」


 クロエ「そうね。晩ご飯には丁度いい時間じゃないかしら。マヤ〜、今日のメニューは何?」


 2人がギルドから戻って来ると、そこには空のお皿がテーブルの上に並んでいて、ウサ耳の部屋着を着た満腹状態の少女がいた。


 茶髪の少女「・・・ゲフ!」


 マヤ「すまないねぇ、この子が全部食べちまってもうないんだ。」


 クロエ「嘘でしょ!?大人3人前をこんな小さな子が!?」


 オリエッタ「そ、そんなぁ~!せっかく堅苦しい報告業務を頑張ってこなして来たのに〜!」


 マヤ「ま、まぁ今日の所は大目に見てやってくれ。あんなことがあったんだから。」


 クロエ「そ、そうね。仕方ないわ。」


 オリエッタ「グスン」


 マヤ「それであの子の今後についてなんたが・・・私が養子として引き取ることにした。」


 クロエ「急に何を言い出すの!あなた冒険者でしょ!家を空けることだって多いのにあんな小さな子をお留守番させられる訳ないじゃない!」

 

 オリエッタ「そうよ!そうよ!」


 マヤ「冒険者は引退して冒険者ギルドの職員として働くよ。それに私達の同世代は引退する冒険者がチラホラ出てきているだろ?年齢的にもちょうどいいんじゃないかと思ってさ。」


 クロエ「だとしても私達のようなトップランカーはまだまだ必要とされているわよ!私だってまだ続けるつもりだし!」


 マヤ「もちろん、引退するのは私だけだよ。何より中途半端に情をかけて責任を取らないのは無責任だからね。あの子が立派なギルド職員になるまで面倒を見ることにしたのさ。悪いけど、これはもう決めたことなんだ。」


 オリエッタ「・・・ 分かったわ。そこまで言うなら"アタイ"はもう止めないわ。今まで散々頼りっぱなしだったからね。今度はウ↑チ↓がマヤを支えるわ。」


 クロエ「オリエッタ・・・あなたの一人称めちゃくちゃよ・・・」


 オリエッタ「・・・」


 マヤ「2人とも本当にすまない・・・ それじゃあ、あの子にも伝えないとね・・・おや?あの子が見当たらないねぇ?」


 クロエ「おかしいわね・・・ さっきまでお腹パンパンのウサギちゃんが椅子に座っていたのに。」


 オリエッタ「あらあら〜、あの子ったらもう一人で先に歯磨きしてベッドで寝ちゃっているみたい〜」 


 クロエ「さっきもこの流れみたわよ!?というか、あの子もう一人で生きて行けるんじゃないかしら?」


 マヤ「なに言ってんだい!あんな図々しい子、人様に出せるわけないよ!この私がちゃんと躾をしないと!」


 オリエッタ「フフッ、もうすっかり母親ね。」


 マヤ「...フッ、確かにそうかもね。」


 クロエ「・・・ああ!もう負けたわ!こうなったらアンタの事とことん応援してやるわよ!そして毎日晩ご飯食べに来てやるからね!」


 マヤ「週末だけだよ!それ以上はウチの家計が火の車になっちまう!」


 そうして、3人はその後も談笑し続けた。少女が3人の会話をベッドでずっと聞いていることに気付かずに。


〜1週間後〜


 クロエ「マヤ〜、約束通り週末に晩ご飯食べに来てやったわよ!感謝しなさい!」


 オリエッタ「あらあら〜、ウサギちゃんも元気そうね!」


 茶髪の少女「みなさん、先日は助けていただき、本当にありがとうございます!この通りすっかり元気になりました!」 


 そう言って少女は、深々とお辞儀をした後、ウィンクをしながら敬礼のポーズをした。


 オリエッタ「あらあら〜、本当に元気いっぱいね。ちょっと泣きそうになっちゃった。」


 クロエ「というか、1週間前とはまるで別人じゃない。マヤ、1週間の間に一体何があったの?」


 マヤ「いや、これといって変わったことは無かったんだが、食事の度にどんどん口数が増えてきて、現在はご覧の通りさ。」


 オリエッタ「もしかして、お料理に何か入れたのかしら?」


 マヤ「何て失礼な奴だい!そんな訳ないだろ!」


 茶髪の少女「いえ!お料理にはあるものが入っていましたよ。」


 マヤ・ クロエ・オリエッタ「?」


 茶髪の少女「それはBIGLOVEビッグラァブーーーー」


 マヤ・クロエ・オリエッタ(うぜぇ・・・!)


〜現在〜


 クルミ「これが私とギルドマスターの馴れ初めと、受付嬢になったきっかけです!どう?すごく感動的でしょ!?」


 後輩女性職員「・・・あのー、儚げな少女はいつ出てくるんですか?」


 クルミ「え"っ"!?」



続く


 

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