エルフとの邂逅
「こっちで待っていろ。」
バタンと音を立ててドアが閉まった。全く其処まで嫌われて仕舞ったのか。なにをしたわけでも無いのに。
彼女の名前は、セシリア・サイコムと言った。名前だけは教えてくれたが、それ以上の紹介はしなかった。
僕は勝手に鑑定を掛けた。彼女は人族とエルフと獣人のミックスだった。スキルが獣化。そして精が土、光、適性が無、風、水,闇とあった。僕はチョット驚いた。凄い才能があるのに勿体ないことに、獣化のスキルしか使えない。精の魔法は加護が必要だが適性魔法は勉強すれば出来るのに。此方ではどのような魔法の使い方をしているのだろうか。魔道具があるのだから、もっと魔法の発現があると思っていたのだが。
若しかして人族の教師がいないのだろうか。
「お待たせして、申し訳な・・・!なんと,大いなる精霊のお使い!」
またか。おいヌポポ,お前って凄いんだな。『ヌポ』念話で返してきた。
このエルフは結構年取っているな。1200歳だ。でも、見た目は中年に見える。人族的にはナイスミドルってとこだ。銀色の長髪を後ろで結わえている。長身、細身、目は細いが切れ長でシュッとしている。イケメンって奴だ。そしてスタンダードな虫の妖精、クワガタだ。木の精、他は水と闇。
「人族が3人も加護持ちとは。驚きました。何処で加護を、いや何処に精霊樹があるのですか?是非教えて頂きたい。」
名乗るのを忘れてしまうほど慌てている。僕らはまず名乗ることにした。それぞれ名乗りを上げ終わって、彼はやっと自分の無礼に気がついたようだ。
「こ、これは失礼をば。私は、エルフ族のエヴァンス・サイコム。此処の国の責任者です。」
エルフ族?精霊族ではないのか?然もサイコム。彼女と血縁があるのだろうか?彼女の父親?
「あの、セシリアさんと同じ名字ですが。」
「ああ、セシリアは私の娘です。私には人族との間に8人の子供をもうけました。後、獣人族との間にも5人、勿論エルフ族とも一人居ります。今存命している子供は、エルフ族との間の子供とセシリアともう一人くらいですが。」
ハーレムか!まあ、寿命が長いからそうなるかエルフ以外は短命だから、何人も居ることになるのだろう。
「すごいですね。」フランが,退いている。
「そんなことは無いです。あの災害の後、此処は人口が酷く少なくなってしまいまして。争っていられなくなりました。此処は色々なミックスが居ります。純血のエルフは今5000人でしょうか。人族もかなり純血は残っていますがミックスも増えて来ました。此処の国全体の人口はやっとあの災害以前に戻りつつあります。」
「どれくらいになりましたか?」
「大体50万人でしょう」
アフロスと同じくらいか少し多いか?
「私たちは宗教を越えて一緒に生き延びたのです。獣人族に習って,宗教は信仰しておりません。以前は精霊族と言っておりましたが。」
そう言うことか。良い方向に行ったみたいだな。エルフと聞いて警戒したが此処のエルフは災害の後此方に閉じ込められたのだ。エルフの兵士だったのかも知れない。
「して何処の国からいらしたのか?半島のコルカナですか?」
「アフロマという国ですこの魔境を越えて西南の方角にあります。精霊樹は中ッ国にあります。」
僕は意を決して世界樹のことを教えてあげた。このエルフは信用出来そうだ。
「『失われた大陸』・・・本当のことですか?若しかして中ツ国とは中ツ島のことでしょうか?」
「はい。そうです。」「なんということ・・・」
彼は泣き出してしまった。