プロローグ
「これはこれは、デメテラ。また祝福を得られたのですか。喜ばしい限りですな。」
彼は、エルフの総帥だ。昔わたしの教育係をしていた。
私に『穢れ無き精霊の王』の仕事を強要していた。あの頃は,彼の言うことを憧れを持って、唯々諾々と受け入れていた。私は馬鹿だ。こんな人に恋していたなんて。利用され、捨てられた。かれの権力のための捨て駒だった。
「さて君の祝福は、おお!ドリュアスですか。素晴らしい。是非、エルウシアのために力を貸してくだされ。」
「いえ、私は隠居の身です。これからもビットで畑や森の管理をさせて頂きたく、こうして御願いに参りました。」
「その様な勿体ないことを申されるな。今は『穢れ無き精霊の王』もいない。力ある祝福は貴重ですぞ。」
「申し訳ありません。長らく祝福が無かった物で。このようにおばあちゃんですわ。これ以上は身体が待たないわ。静かに隠居させてください。御願いルーデス」
「・・そうか。分った。」
やっと、解放された。一安心。だけど彼は,根掘り葉掘り聞いてくるだろう。
祝福をどこから得たのかを。彼等は、精霊樹の木の実を独占し、だれにも分け与えない。過去に精霊王に加護を取り上げられた人々を見て、異常に警戒心が強まったのだ。今も魔法袋の中は祝福の木の実を蓄えていることだろう。小心で強欲、吝嗇。自分たちの狭い世界に収まって、広い視野も無い。総帥とはあきれかえる。何時までも同じ時間を繰り返して他には目を向けない。
この世界はゆっくり消えていくだろう。エルフの人口は5000人も居なくなって居る。
可愛そうな動物達を僕に作り替え,奴隷にしている。
獣人族や人族の街は、とても賑わっていた。人口もとても多かった。
もっと色んな街や国に行ってみたかったけれどあれ以上居たらカムイさんの迷惑になっただろう。
私の役目は、ルーデスや彼の周りの人々から、カムイさんの祝福を隠し通すことだ。
万が一、ヌポポのことが知れれば,一体どのような事になるだろう。『穢れ無き精霊の王』が人族から出てしまったのだ。カムイさん、ご無事でいてくださいね。