第02話「メイド死にゲーをする 2日目」
昨日16万円も頂いてしまったので流石に1ヶ月は続けさせて貰おう。
朝7時半、学生で満たされた電車に乗って通勤。
どうしよう10才近く差がある日本男児の性癖を、銀髪美女でメイド(仮)な私が開花させてしまったら。
なむさん、学生よ。
私ったら罪な女、頭の中の半分は改札を出た目の前にあるパン屋でコーヒーを飲むかどうかを考えているのに。
2日前の私だったらそんな選択肢は浮かびはしない。
インターフォンを鳴らすとご主人様がドアを開いてくれた。
銀髪美女、美形の中世とランデブー。
玄関のドアが開かれると同時に鼻孔へと突き刺さる味噌汁の匂い。
やっぱり日本人といったら味噌汁でしょう。
日本生まれ日本育ち青山フェリシア24歳、英語分からない。フランス語も分からない。
不覚、ぐうとお腹がなってしまった。
え、朝食の残り頂いてよろしんですか?
はい、さっさと着替えてきます。
休憩室に入ると布団が目に入った。
昨日までなかったのに。
やっぱりご主人様わたしの貞操を狙いになって?
ああ、ご主人様だったら純潔をささげてもいい。お金くれそうだし。
デデーン、純潔、3諭吉。
布団の方が高そうだな。
昨日と同じメイド服に着替えてリビングに戻ると、テーブルの上に朝食が用意されていた。
ご主人様好き。
ご主人様の為だったらエプロンドレスの方のメイド服も着てもいいと思ってしまう。
ただ寒そうだから少しばかりの嫌悪。
いっけなーい、けんおけんお。
冷めてしまう前に朝食を。
いただきます。
ほかほかと白い湯気が立っているごはんに、あおさが浮かんだ根菜類と豆腐の味噌汁。
大根おろしが添えられた焼き鮭にだし巻き卵。
かつお節と和えられたほうれん草のおひたしに、油揚げと出汁が効いているひじき煮。
え、デザートにサツマイモの羊羹ですか。
ご主人様、私、おデブメイドになってしまいますー。
いただきます。
あの後、ほうじ茶を頂いてほっと一息ついたところで、本日の業務開始です。
昨日と同じくモニター私ご主人様との配置。
背後からとくとくと液体をグラスに注ぐ音が聞こえてきます。
セーブポイントからゲームスタート。
なんかセーブポイントの目の前に鎧がいた。
さてはおめえモンスターだな。
私の3連RをくらえRRR。
ありゃ、弾かれてそのまま切られちゃった。
GAMEOVER
えっ強すぎないですか?
鎧に切りかかった時、背後からぷっと音が聞こえた気がした。
後ろを振り返るとご主人様がつまみのチーズを食べていた。
羨ましげに眺めていると新しいチーズをご主人様に口の中に入れられ、体の向きをモニターの方へ戻された。
ゲーム再開。
え、さっきまで動いていなかった鎧がこっちに向かってくる。
え、なんでなんで。
倒すのは無理見たい。
逃げろ逃げろ、どこに?
あっ
GAMEOVER
もういっちょ、こっちはお金貰っているんだぜー。
逃げてやるぜー。
鎧とは逆方向へ一目散に進んでいく。
けれどもスピーカーは背後から着実と近づいてくる鎧の足音を発している。
わ、崖だ。
もう迎え撃つしか。
Rが攻撃ならLがガードでしょ。
鎧へ向き合い、Lを押した。
剣を振るう鎧、弾く私の分身。
そして分身は弾いた反動で崖から転げ落ちていった。
GAMEOVER
〇を押してセーブポイントに戻ると目の前には鎧はいなくなっていた。
なんで? と私が浮かべた思考よりも早く、ぶふぉっと音がした。
そしてびちゃあっと。
ご主人様大丈夫ですか? と振り返るとワインのカーペットの前で腹を抱えて笑い続けているご主人様がいた。
えー。
これが啞然という感情か。
とりあえず拭いたほうがいいのかな。
あ、ご主人様がやるからいいと。
じゃあ、私は何をすれば。
何ですかこの5万円。
え、今日はもう帰って欲しいと。
はい、分かりました。
ごちそうさまでした。失礼いたします。
何だったんだ。




