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一番偉いドラゴン使い

「夜間に軍港から飛び立つ物体が確認された。あまり大きくはないので猛禽類の可能性もあるが、野生のドラゴンの可能性もある。今晩警備にあたるものも含め、不審なものがないか厳重に注意しておけ!」


 偉そうな男ーー騎獣部隊長の朝礼が終わり、午前の訓練が開始される。


 ネルが帝国に来てから二日目だ。相変わらずネルに指示は通らず、ここだけ幼児施設の様相を呈していたが、軍部としてはあまり問題なかった。ドラゴンとドラゴンが懐く相手がその場にいればそれで十分なのだ。成長すれば引き離すことができる。


「ネル、いい子にしていろ。特にあのでかいドラゴンの前では騒ぐな」


 ダンテの忠告を聞いているのかいないのか。


「おっき〜」


「ドラゴンはな。爬虫類にしては珍しく群れで過ごす。その中でリーダーが必要だ。んで、シンプルに一番でかくて強いやつが一番偉い。そしてドラゴン使いも、一番でかいドラゴンを扱えるやつが一番偉い」


「僕! 僕! 僕の龍が一番大きいよ!」


 ネルはホバリングドラゴンにのって、一番大きいとされるドラゴンと同じ高さまで飛び上がってそうはしゃぐ。


「ネル、あのな! でかいってのは体のことで、高いとこにいりゃいいってわけじゃないぞ。いいから降りてこい!」


 ダンテがネルを見上げて叫ぶが、まったく聞いていない。


()()()()()()()()!」


 ホバリングドラゴンにのって更に上空に飛翔するネルに対して、ダンテはあきれて首を振る。


「エストラ、あとは頼んだ」


 ダンテ含め、ダルカニアの人々にとってネルはただの困った幼児だ。変わったドラゴンについてきたおまけ。しかし、ネルを見守るエストラのまなざしは、この地の人々と違った緊張感があった。


 リュカの民も、ダルカニア帝国人も話にならないほど龍を、ドラゴンを扱うことに長けたオロソの民。しかも、道理も分からない子供。そんなネルをこの半家畜化されたドラゴンだらけの土地に放置していいのか。このあと、何かとんでもないことが起きるのではないかと、戦々恐々としているのだった。






 ダルカニア帝国は、情報漏洩をとても恐れていた。帝国が周辺国を武力で押さえつける今の体制。それを維持しているのは、ドラゴンを扱うことができるからに他ならない。


 そのため、偵察と管理を厳重に行っていた。


 山の向こうから来るスパイ。陸続きの隣国から来る侵略者。海の向こうから来る略奪者。とくに、海から来るものをダルカニア帝国はおそれていた。


 ドラゴンの飼育は主に軍港で行われていたためでもあるし、重量のあるドラゴンを眠らせて連れ去るとしたら船が適しているからだ。


 海の向こうから来るものを恐れていたが、逆に海に向かって飛び立つものに関しては警戒が薄かった。まれに野生のドラゴンが飛び立つことがあるもののの、それは温和な大陸製のドラゴン。それ以外のドラゴン、特に龍の島から連れてきたドラゴンは厳重に管理されていた。


 そして、人もまた厳重に管理されていた。はめたら決して外すことができないと言われる、ダルカニア帝国の第二の知恵の結晶である、魔法の腕輪によって。


 ドラゴン使いたちは、魔法の腕輪によって結界内に縛られていた。これは、戦争が始まったら逆に強制的に出撃させられる仕組みも兼ね備えていた。





 だが。


「さあ!毛玉ちゃん。今日もまたあのおっきい子にご飯をあげに行くよ!」


 ネルはまた、夜の闇に紛れて海へと飛び立つ。


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