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俺とオニキス君はタクティカルファイター専用の空間で待機しており、そこは部屋の一室になっていた。
試合開始の時間になり、ランダムで選ばれたステージに転移させられた。
周りを見渡したところ、木が生い茂っている。どうやら森の中に転送されたようだ。そして、オニキス君の姿はどこにもなかった。
タクティカルファイターについて事前に説明を受けたが、地図の魔法具が備え付けで手首に装着されており、魔法具に魔力を流して使うと立体状に地形データが表示された。
地形データには赤い点が表示されており赤い点は敵の位置のようだ。
そして緑の点が、1つある。緑の点は仲間らしく、家が建ち並ぶ、町中に表示されていた。俺との距離はかなり離れているところにオニキス君は転送されたみたいだ。オニキス君の居る町には敵が5人表示されている。
このままだと、混戦になってオニキス君がやられてしまうかもしれないな。
「まずは合流を目標に動くとするか」
始まる前の控え室でオニキス君と話をし、最初は合流することと、作戦を擦り合わせていた。
俺の居る森には少し距離はあるが、1人だけ敵の赤い点が表示されていた。
動きを見ると早速こちらに向かってきているようだ。
全体マップの一番東にある森に俺は転送され、オニキス君の居る西の町まで直線で行くとするならば、その1人の敵が俺の少し西側に居るため戦闘は避けて通れない。
戦闘を回避するならば南か北に大回りをしなければならないが、南は崖のルートのため不可能だ。
北は森を抜けた先に荒野があるみたいだが、荒野には敵が2人居る。
そして、2人のうち1人は俺の居る東の森に向かってきている。
俺の方に向かってきている奴らは仲間同士と思われる。
「オニキス君と合流するには戦闘するしかないか。北の敵はこっちに来るまでにまだ時間がかかるだろうからな。」
俺は方針を決めると、こちらに向かってきている敵を目掛けて森の中を駆けることにした。
少し走るとすぐに敵と遭遇した。Aクラスの初めて見る男の子だった。見た目的には髪型をセンター分けにした大人っぽい好青年といったところだ。武器は右手に剣を持っている。
「第三位階火魔法【火球】」
Aクラスの好青年は俺に向けて【火球】を発動し攻撃を仕掛けてきた。
一発の【火球】ではなく複数発を撃ってくる。
俺は走りながら、【火球】を躱す。躱せない【火球】はタクティカルファイター専用の魔法具武器を剣状に変形させて斬る。
俺とAクラスの好青年との距離はまだ少しある。
俺は距離を詰めるため、前へと駆け出す。
Aクラスの好青年は俺の動きに対処するため【火球】を発動し、攻撃してくる。
しかしその攻撃はさっきの攻撃よりもかなり速い攻撃と数だった。
俺は躱しきれないと思い咄嗟に足を止め【土魔法】を発動させ壁を作る。
すると、俺の足元に魔法陣が展開された。俺はその魔法陣から離れるために横へと飛び出す。魔法陣からは第5位階火魔法の【火柱】が発動された。
飛び出した俺に向けてまた【火球】が飛んでくる。
俺はこのままではAクラスの好青年に近づけないため、俺も同じ数の【火球】を発動させて相殺することにした。
そこからは魔法の撃ち合いになった。それでも俺の【火球】の飛ぶ速度よりもAクラスの好青年の【火球】の方が速く、俺は前に進めない。
俺は魔法の撃ち合いは諦めて【土魔法】の土壁を前方に複数作り土壁を移動しながら近づくことにした。
【火柱】の魔法が展開されるが、その攻撃を躱しきり、ようやくAクラスの好青年まで近づいた。
俺が剣状にした武器で斬りつけると相手も剣状にした武器でその剣を防がれた。少しの間鍔迫り合いがおこる。
「僕の魔法攻撃を浴びてかすり傷すら無いなんて、Sクラスの方はみんな貴方みたいな方ばかりですか?」
「さぁな」
鍔迫り合いをしつつ俺に向けて話を投げかけてくるが、俺はその会話に応じるつもりはなく適当にあしらった。
そのタイミングで俺の横から風の刃が飛んでくる。
俺は鍔迫り合いを辞め、風刃を躱すために後ろに大きく跳躍した。
「ちっ!避けられたか!」
風刃を放ってきた男がそんな悪態をつく。
どうやら、マップの北側からこちらに向かってきた奴が合流したようだ。
「今の不意討ち攻撃を躱すとは驚きですね。ですが、これで2対1です。どうしますか?降参しますか?」
Aクラスの好青年が俺に向けてそう声をかけてきた。
「いいや、降参はしない。悪いがお前らを倒させてもらう。」
「こいつSクラスだからって調子に乗ってやがる。」
「ケビン、油断しないでください。この方は強いですよ。僕の魔法攻撃は全て躱されていますからね。先ほどケビンが来なければ僕は倒されていたかもしれなかったですからね。」
「マルコスがそう言うほどなら、気をつけておくさ。」
「ご存知だとは思いますが、このタクティカルファイターは人数の差で勝敗が決まることがほとんどです。なんせ、同じ条件で戦っていますからね。
さぁ!どうやって僕たちを倒すのか見せてください!」
「第四位階風魔法【風刃】」
「第三位階火魔法【火球】」
2人は俺に向けて魔法攻撃を発動する。俺は土魔法で巨大な土壁を作りその攻撃を防ぐ。
だが、相手の攻撃が俺の防御を上回ったため、土壁は破壊されてしまう。
俺はそれを予測していたため、土魔法で自身の足元の土を隆起させ相手よりも高い位置へと上がる。
そして、二人に向けて風刃と火球を発動する。威力は制限以上の出力は出せないが、魔力量と魔力操作力によっては数は無数に出すことができる。魔法の撃ち合いになり、俺は2人の攻撃よりも多い数の風刃と火球を浴びせる。
「ちっ!そんなの反則だろ!」
ケビンと呼ばれていた男がそう言いながら、回避行動をとる。
マルコスと呼ばれていた好青年もケビンとは反対方向へと回避する。
俺は風刃と火球の攻撃に加えて土魔法を発動して相手の回避先に土壁を作り、行動範囲を徐々に狭めていく。
「くそっ!トリニティ魔法使いかよ!マルコス!なんとかしろ!」
「わかってる!ケビンあれを頼む!」
「わかった!」
「第三位階火魔法【火球】」
俺に向けて【火球】を発動したが先ほどよりもさらに速度のある【火球】だった。俺はそれを躱しきれずに左腕をふっ飛ばされてしまう。
胴体や顔に直撃していれば倒されていただろう。
「何やってんだよ!ちゃんと当てろ!」
「くそ!動きながらだと精度が悪いんだよ。」
ケビンはマルコスに怒り、マルコスは悔しそうな顔をしつつ俺の攻撃を回避し続けている。
先ほど俺の左腕を吹っ飛ばした攻撃といい、俺はその2人を見て、笑わずにはいられなかった。




