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僕の名前はメインキャ・ラクター
片田舎の農家に生まれた僕は平凡な家庭ですくすくと育っていった。
僕が普通とは違ったのは6歳の時で、それまではただの子どもだと思っていた。田舎にある神殿にて魔法適性を神さまより授かった。
平民で魔法適性を授かることは珍しいらしく、しかも2つも魔法適性があるみたいで、神殿の司祭様に大層驚かれたのを覚えている。司祭様驚きすぎてギックリ腰になって2週間ぐらい寝込んでたな。僕のお父さんお母さんも喜んでくれたし、村のみんなも喜んでくれた。
それが僕にとってはすごく嬉しかった。
僕の魔法適性は風魔法適性と火魔法適性だ。
司祭様が魔法について色々と教えてくれたおかげで、魔法は結構覚えることができた。魔法を覚えるのは楽しくて、いつも魔法を使って色んなことを試していた。
そんなある日、平穏に暮らしていた僕たちの村を魔族たちが襲い、村は一瞬にして焼け野原になった。
僕に魔法を教えるためにと来てくれていた司祭様が魔族たちの攻撃を防いでくれて僕達家族はなんとか逃げ切ることができた。
だけど司祭様はきっともう、、、、
そんなことを思いながら一緒に逃げてきたお父さんとお母さんとまだ生まれたばかりでお母さんに抱きかかえられていた弟の背中を必死に追いかけた。
すると前を走っていたお父さんが急に倒れた。
どうしたんだろうと思っていると次にお母さんが倒れた。あの時お母さんの腕の中にいた弟の泣き叫ぶ声が僕の耳に鮮明に残っている。
お父さんとお母さんは血溜まりの中に倒れていて、その時まだ子供だった僕にはその血溜まりが何なのか誰の血なのか理解できていなかった。
目の前には魔族が待ち構えていて、何やら下卑た笑みを浮かべているようだった。
魔族が何かの呪文を唱えると、泣き叫ぶ弟の声が消えたその瞬間何か水飛沫が僕の顔に飛んできたのを覚えている、その水飛沫の色は赤色だった。
それからのことは良く覚えていない。
気がついて上を見ると雨が降っており、下を見ると魔族が僕の足元に横たわっていた。
お父さんとお母さんと弟の近くに行きそれぞれの肌に触れる、冷たかった。そうだこれはきっと雨のせいで冷たくなっているんだ。
「お父さん、お母さん雨に濡れて冷たくなってるよ、風邪をひくからお家に帰ろうよ」
そう声をかけた僕の言葉には誰も返事をしてくれなかった。
へたり込んだまま僕は泣き叫ぶ。そうして気を失った。
目を覚ますとそこには知らない天井があって、僕はベッドの上で横になっていた。
「おや、目が覚めたかい。」
僕に声をかけたのは老齢なエルフのお婆さんだった。
「ここは?」
「私の家だよ。少し、案内をしようじゃないか。」
老齢なエルフのお婆さんは僕を連れて家の周りを案内してくれた。家を出ると見たこともない大木があり、その前には湖があった。湖には鹿が水を飲みにきており、大木にはリスが巣を作っているようだった。
空気が澄んでいて息をするだけで心地良い、そんな感覚になっていた。
「ここはどこ?」
「ここは世界樹の地じゃよ」
「世界樹の地?」
「あそこに大きな木があるじゃろ?」
「うん。」
「あれがこの世界で一番大きい木だから世界樹って呼ばれてるんじゃよ。その世界樹がある場所だから世界樹の地じゃ」
あの頃は、何も知らない幼い僕に分かりやすく教えてくれてたんだと思う。
「良いところだなぁ」
「そうじゃろ?」
「うん。こんな良いところがあるなんて知らなかった、お父さんとお母さんと弟にも見せてあげたいな〜、そういえばみんなは?」
「そこじゃよ」
お婆さんは世界樹の下を指さした。そこには3つの石が並べられており、すこし土が盛り上がっている。
「なにこれ?」
これを僕は知っている。村にいた頃におじいちゃんとおばあちゃんが亡くなったときに最後に村のみんなで埋めたのを覚えている。そしてその埋めた上に石を置いていた。
だけど、信じられなくて信じたくなくてそう聞いてしまった。
「お墓じゃよ」
老婆が悲しげな目をしながらそう言った。
「うそだ!そんなのうそだ!みんな元気だったのに病気もしてなかったのに!なんでなんで!なんで、、、、」
僕は頭が真っ白になって全身の力が一気に抜けて膝から崩れ落ちて、胸が張り裂けそうなぐらい痛くて、息もできなくて、ただ目から涙だけはいっぱい出て、ずっとずっと泣いていた。
そして僕はまた気を失ってしまった。
それから目を覚ました僕にエルフのお婆さんは話をしてくれた。そして幼いながらもその話を理解した。
僕の村は魔族によって滅ぼされて、村のみんなも僕の家族もみんな亡くなってしまったみたいだ。僕だけが生き残ってしまった。
どうしてこんな目に遭わないといけないんだろう、僕が悪い子にしてたから?みんなに喜んでもらえた魔法をいっぱい頑張って勉強して練習して、使えるようになったら褒めてもらえたのに。
「魔族は悪だ、人間の命を弄ぶような最低な奴らだ。」
お婆さんは悲しげな目をしながらそう言った。けれど、どこか憎しみを感じさせるような目でもあったと思う。
その頃から僕は魔族に対して強い憎しみを抱くようになった。
お婆さんは魔法についてとても詳しくて僕の魔法の練習にいつも付き合ってくれた。
僕は魔族に復讐するために魔法の技術を磨いた。
そして僕が12歳になったときにお婆さんは亡くなった。寿命だったみたいだ。
お婆さんは最後に15歳になったら王国に行って王都学園に通いなさいって言っていた。15歳になるまではただひたすらに魔法と剣の腕を磨いていた。
そして15歳になった僕はお婆さんの遺言の通り王都学園に通うべく、王国へと向かった。