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2025/01/19 投稿 よろしくおねがいします。
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明かりは魔石を利用したランタンの明かりを手元に当たるようにして、手に取った“改訂版「やさしい世界史」”のページを開いた。
予想通りというかなんというか。本の作りは教科書のような構成をしていて、読み始めて数分で眠くなってきた。
このままでは、知識を得るどころではない。俺は一度“改訂版「やさしい世界史」”を戻して、次に読みやすそうな“フォルティーンと四騎士”という本に手を出した。
読んでみると、100年以上前にフォルティーンで起きた史実がファンタジー系短編小説風に仕立てられており、この国が魔王に狙われているところから話は始まっていた。
王様はこの事態を解決するために、国民から勇気ある者を集い、選ばれたのは四人の青年たちだった。
戦士のフィリー、魔法使いのセファード、遊撃のキーファ、僧侶のヨークラント。彼らは喧嘩をしながらも互いに尊敬し高め合い、最終的には魔王討伐に成功する。
そして、その功績を讃えられて彼らは領土を与えられて、今度は領主となり国を守っていくという話だった。
短編小説ということもあり、かなりハイスピードで読み終えた俺はあることに気付いた。
“セファード”って、そういえばマレードの領主の名前だったはずだ。ゴードンさんがそう言っていたのを思い出した。
となると、この話に出てきた四騎士の子孫たちはセファード以外にも生きていて、この国で生きている人たちにとっては常識なのかもしれない。
俺はもう一度“改訂版「やさしい世界史」”を手に取り、今度は索引からセファードという単語のあるページを引き、調べてみる。
“セファード”というのは家名であり、マレードの領主 兼 フォルティーン共和国の国王陛下としての役割もになっているとのことだった。
共和国なので基本的には国民主体の政治にはなるが、外交のためには代表となる人が必要だもんな。
小説の方でセファードは魔法使いという役職ではあったが、世界史の方では“聖女の末裔”として扱われていた。
この辺りはミシェルからも少し話を聞いていた部分ではあるが……。
聖女=聖職者=僧侶というイメージがあったので、この違いには驚いた。
しかし、さらに読み進めていくと、どうやらフィリー、ヨークラント、キーファの家系は戦争の影響で全員亡くなってしまい、後継者が居ないとのことだった。
そんな四騎士の現状を思うと、フォルティーンにおいてセファード家が聖女の末裔として扱われているのも、国の代表も務めている理由はよくわかる。というか、そうならざるを得なかったんだろうな。
……ここでふと、ある一つの仮説が浮かんだ。
それは、面会に来るという金髪の少女のことだ。もしも彼女がマレード領主であるセファード家に関係のある立場の人物だとしたら?
例えば、隣国から来た使者とかで、セファード家に不利益をもたらすために誰かが故意的に起こした事故に巻き込まれたのだとしたら……?
転生系小説なら、序盤で王様との謁見があったりする。有名なRPG作品なら、自分の住んでいる町が襲われたり、主人公やヒロインが誰かに攫われたりとかも考えられる。
では、この【SUMMER BIRTH】というRPGの世界において“主人公”が遭遇する、物語が動くイベントはなんだ?
一番最初の“大事故に巻き込まれて記憶喪失になること”は主人公がどんな人間だったのかを追憶や想像、もしくはゲームプレイヤーが自己投影させる余地を生み出すためのものと考えても良いかもしれない。
となると、確実に何かありそうなのは、あの少女との面会だ。
何も無ければ無い方が良いのだが、俺が引きこもり時代に培ってきた本能が『このまま本だけを読んで当日を迎えるのはダメだ、絶対に何かが起きる!』と叫んでいる気がする。
とはいえ、大けがをして満足に動けない現状で出来る備えは何かあるのだろうか。
「ほんと……どうするかなぁ。」
俺は何か良い方法がないか、もう一度本を読み直した上で考えることにした。
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