7.
短めですが、よろしくお願いします。
「うーん、ダメだ。」
俺はこの世界を知る為に“改訂版『やさしい世界史』”というタイトルの本を読んだが、前世で言うところの社会の教科書と変わらない構成だった。
異世界で初回に触れた書籍がまさかの全ページカラーだったのでこの世界の技術の高さに驚いた。
それはそれとして、だ。
学生時代はそれなりに成績は収めていたものの、大体がテストを一夜漬けで勝ち取った部分が反映されていたので、そこまで頭が良いとは言い切れない。
そんな俺が教科書と対峙すると、どうなるかというと。
「外がほんのり明るくなっている……」
そう、本を読み始めてすぐに寝落ちしてしまったのだ。
いつのまにかお天道様の光が夜の終わりを告げようとしていた所だった。
「3日後、というか明後日か。」
ゴードンさんがなるべく早く知識をつけるように言ったのは、あの目覚めた日に会った少女との面会があるからなのだろう。
彼女がどういった人物なのかは聞いていないが、この世界の基礎的な知識がないといけないということだ。
(そうなると、何かしら役職がある人のお子さんとか?)
確かにパッと見た感じでは、質感の良い服を着ていた気がする。
目覚めてすぐなので、覚えているのは金髪でパーマのかかった少女という印象なのだが。
ミシェルの存在がゲーム冒頭では見たことなかったので、彼女のことを考えるのを後回しにしていた。
とはいえ、“ニック”が身を挺してまで守った人物なのだ。何かしらの立場だろうし、メインキャラの可能性もある。
(うん、まぁ、今は考えてもしょうがないかー!)
うんと背伸びしてから、本を横のテーブルに置いた。
(ちょっと外の空気を吸おうかなぁ)
俺はゆっくり立ち上がると、テーブルや壁に手をつきながら窓まで移動をした。
怪我の具合的には支えがないと歩くのがしんどいのだが、ファンタジーの世界だ。
突然、魔物が現れて全く動けなくて死にかけるなんてオチになったら大変である。
そのためにも松葉杖が無い状態で歩いた方が良いなとは思ったのが、全身怪我しているので想像の倍は歩けないことに気付いた。
「だから、松葉杖を使うのが下手だったのは怪我が酷いからだ。きっとそうだ。」
……という誰かに届くわけでも無い独り言を言いながらも窓をあけたら、心地のいい潮風がゆっくりと入ってきた。
俺はゆっくりと窓際の椅子に座り、そしてのんびりと外を眺める。
改めて考えると、この診療所の立地の良さには驚いてしまう。
街の中でも静かな南西地区にあるとは聞いたが、昨日寄った中央の市場通りと比べると静かすぎる場所だった。
他の地区よりも高さのある場所で岬のような場所に診療所は建てられているので、太陽の動きが綺麗に東から登って西に落ちていく様が見られる。
遠くから、いくつもの船がこちらに向かってきているのも見える。
きっと、これから市場に並ぶのであろう魚介類があの船に乗っているのだろう。
「漁師さん、早くからありがとうございます。」
昨日食べた魚介肉の団子を思い出しながら、そっと瞳を閉じて手を合わせた。
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