表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖者のコウテイ 〜 ミコ様と忘却のエルフ 〜  作者: 飯咲優
第1章 秋に目覚めた物語
7/9

6.

お久しぶりです。

12月の更新なくてすみません!

しばらくは曜日関係なく書き上がり次第投稿する方針に変更します。

よろしくお願いします。

夕方の鐘が鳴った頃、ゴードンさんの診療所に戻ってきた。

 ミシェルは俺を診療所まで送ると、宿屋へと帰って行った。

 

 夕飯も外で済ませていたので、その事をゴードンさんに伝えると、食欲が戻ってきたことに嬉しそうにしていた。


 俺は自分の個室となった病室に戻ると、窓際の椅子に腰掛けた。

 窓の外を見ると、夜の港では灯台の明かりが海を照らしていた。


 転生して2日目ではあるが、なんとなく身体の動きを確認しながらの一日となった。

 松葉杖の使い方には相変わらず慣れないが、元からの身体能力が良いのだろう。思ったよりは身体を動かせていた。

 

 ミシェルから聞いた話によると、元々“ニック”は己の肉体を武器にする武闘家タイプの冒険者らしい。

 この街周辺の魔物はグーパンで倒せてたとかなんとか。強すぎる。


 とはいえ、今の中身は人生の大半を引きこもりして生きてた、中年間近の子供部屋おじさんだ。

 身体が若返ったとはいえ、以前の“ニック”の様な戦闘が出来るかというと、それは無理に等しい気がする。

 早く怪我を治して、自分なりの戦闘スタイルを獲得したいところではある。


 そんなことを考えていると、ドアがノックされ、ゴードンさんが顔を覗かせた。


 「ニック、ちょっと良いか?」


 俺が頷くと、ゴードンさんは数冊の本を抱えて中に入り、ベッド横のテーブルにそれを積んだ。


 「身体が全快するには暫く時間がかかるからな。暇つぶしにでもしてくれたらいいさ」


 「あ、ありがとうございます!」


 背表紙を見てみると、“冒険者のイロハ”“改訂版「やさしい世界史」”“フォルティーンと四騎士”など、この世界について知りたい今の俺に必要な情報が載っていそうなタイトルが並んでいた。


 「回復したらまた冒険者やるつもりなんだろう?」


 「そう、ですね。ゴードンさんにお世話になりっぱなしっていうのも申し訳ないですし。」


 前世(崇紘)の時、母さんの身体が弱くなってからというもの行政への手続きは俺が行っていた。

 その時に何度も沢山の人が働いているのを目の当たりにしては、引け目を感じていた。


 もちろん、こんな俺でもサポートしてくれる人たちを尊敬しつつも、こんな俺だからこそ蔑まれているのではとすら考えていた。

 

 そんな思いをしてきたからこそ来世があるなら、他人の助けが出来るようなしっかりとした人間になりたいとも思っていた。

 

 「うん、やっぱり俺は周りの人を助けられるような人になりたいですから。」


 俺の言葉にゴードンさんは笑顔で頷き、そして頭を思いっきりワシャワシャと撫でてくれた。

 

 「ゴードンさん!?」


 「お前さんは、記憶が無くても根本的なところは変わらないんだな!」

 

 ガハハと笑うゴードンさんの様子に、俺はなんだか擽ぐったい気持ちになった。


 「ありがとうございます」


 「とはいえ記憶が曖昧なままで生きるのは、特にノースタリアでは難しいだろうしな。」


 「どうしてですか?」


 「……ノースタリアでは人種差別が激しくてな。特にエルフ族は戦争を仕掛けたって言われてる分、エルフ族と仲良くしてるヒューマルでも差別の対象になったりするからな」


 「え、でも、街ではそんな様子はなかったように感じたけど……」


 崇紘として元々いた世界で“ヒト”と呼ばれる見た目をしている者をこの世界では“ヒューマル”と呼ばれていた。


 街中で見た冒険者や街の人たちの様子を思い出しても、大勢のヒューマルたちの中には少数ではあるが、ミシェルの様な身姿をしたエルフ族、さらにはドワーフっぽい人もいた。

 

 戦争のせいでそういう差別は少なからずあるのだろうとは冷静に考えたら分かるが。

 自分が短時間でもみた光景からは、到底、人種差別があるようには思えなかった。


 「マレードは復興の中心だからってのもあるが、一番は領主のセファード様のおかげだな。

 もしマレードで差別をするようなやつが居たら自警団と冒険者ギルドが協力してすぐにとっ捕まえちまうからな。」


 「結構、厳重な警備体制が敷かれてるんですね……」


 「だからまぁ、この街はともかく、冒険者としてやっていくためにもな。歩行面のリハビリをするのは前提として、知識面でもリハビリ頑張れよ」


ヒラヒラと手を振りながら部屋を出ていくゴードンさんに感謝しつつ、俺は持ってきてもらった本に手を伸ばした。


 「あー!そうそう、3日後の昼ぐらいにお前さんが命懸けで守った嬢ちゃんが来るらしいから予定開けておくようにな。」


 「わかった。」


 「……くれぐれも、面会の時は粗相のない様に。その為にも、ある程度の知識はあった方が身のためだからな。」


 最後に気になる言葉を残して彼は部屋から出て行った。


今度は戻ってくる様子は無いので俺は改めて本に手を伸ばし、まずは基礎的なことが学べそうな“改訂版「やさしい世界史」”から読み始めることにした。


.

読んでくださり、ありがとうございます!

ブクマ・評価・コメントなどもつけてくださると嬉しいです。よろしくお願いします(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ