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聖者のコウテイ 〜 ミコ様と忘却のエルフ 〜  作者: 飯咲優
第1章 秋に目覚めた物語
5/9

4.

大変お待たせしました!よろしくお願いします!


***

2025/01/19 国名説明の件、表記の誤字など修正しました。


 朝ごはんを食べた後、俺たちはリハビリがてら散歩を始めた。

 初めは静かな海沿いの街かと思っていたのだが、しばらく歩いていると徐々に人が増えてきた。


 街の東西にはそれぞれ宿屋街があり、中心部の市場に向かって徐々に活気に溢れていく。

 ちなみに、ゴードンさんの診療所は街の中でも静かな南西に位置しているので、療養にはピッタリな立地らしい。

 

 それにしても、流石はファンタジーの世界だ、冒険者であろう人たちが剣や杖を持っている人の姿が多くみられた。


 「あの人たちはやっぱり冒険者とかなのか?」


 「そうだね、この街には冒険者ギルドもあるから、この辺りの宿屋街を拠点に活動してるんだ。君もあの事故の前は路地にある宿屋に泊まってたんだよ。」


 「あー、そういえばそうだったんだよな……」

 

 朝食の時にゴードンさんから記憶を飛ばす前の“ニック”について色々と教えてくれたのだ。

 

半年ほど前から駆け出しの冒険者としてこの街を拠点に生活をしてたらしく、街の人からは色々と助けてくれる好青年だという印象があるという。

 実際に、力仕事までは行かなくとも、定食屋で人手が足りない時に働いたり、街のゴミ拾いをしたりしていたんだとか。


 ゴードンさんとミシェルと知り合いになったのも、この街に来てすぐに受けた薬草採取のクエストがきっかけらしい。

 診療所を営むのに必要な薬草の採取クエストを冒険者ギルドに出していたが、報酬は手作りの回復アイテムを渡すというものだった。

 現金主義かつ回復役をパーティに組み込んでいる冒険者たちが殆どだった為に、あまり薬草は集まらない状況だった。

 そんな中、ソロ活動しているニックとミシェルがよく交代で受けていたという。

 

 先日の事故もゴードンさん絡みのクエストだったが、いつもよりも遠方で出すのを渋っていたのを俺が行くと言い出し、出発した数日後に起きてしまった。

 それで俺が事故に遭ってしまったので、物凄く気に病んでいるようだった。


 『お前さんの怪我が治った後も暫くはうちを拠点にしてくれ。俺にはそれくらいしか出来ないのが心苦しいんだけどな。』


 流石に申し訳なくて一度辞退しようとしたが、ミシェルからも『こういう時は素直に甘えるのが一番だよ』と言われたので、とりあえずは甘える事にした。

 

 そういえばゴードンさんが荷物を取りに行ったみたいだけど、泊まっていた宿には俺の荷物は衣服ぐらいでその他の私物は無かったらしい。


 (ニックは生活周りも整えていて、さらには人付き合いも上手ときた。お坊さんみたいな生活だったのか……?)

 

 前世(崇紘)は人付き合いが下手という程でも無かったが、引きこもり生活を送ってたのでまだ慣れない部分は正直ある。

 なので“ニック”に記憶喪失という設定が無ければ、かなり危うかったかもしれない。


 「今はゴードンさんにお世話になるとしても、怪我が治った後のことも考えなきゃだな」


 「目が覚めて2日目でもうそこまで考えてるの?」


 ミシェルには驚かれたが、一応“ニック”は主人公で俺が悲観的な物語から逃れようとしても、世界の理的なものが俺をストーリーに巻き込んでくることも考えられる。


 冒険者が沢山いるくらいには、外には魔物もいるような世界なのだろう。

 一人でひっそりと暮らすとしても、せめて何があっても戦えるくらいにはしておきたい。それに、だ。


 「ミシェルもいつかは街を出てエルフの仲間を探すんだろ?だったら、俺がゴードンさんの薬草をまた取りに行けるようになりたいってのもあるな。」


 「偉すぎるなぁ。僕だったら2週間ぐらいは寝込むとこなのに。」


 「……そうなのか?」


 「出来ればのんびり暮らしたいんだよねぇ。甘えられるなら環境なら喜んでそれを享受するね。」


 ミシェルは笑いながらそう言った。


 「とはいっても、君がそこまでやる気なら、僕も出来ることは色々と助けたいかな。ちなみに、目が覚める前のことは何も覚えてないの?」


 「そう、だな。とりあえず会話は出来るけどこの国の事とかはさっぱりだな」


 「そっか〜。じゃあ、ざっくりとこの国について教えるね」

 

 ミハエルは喜んで話し始めた。


 この世界は大まかに5つの地域に分けられる。北のノースタリア大陸、東のイストランド大陸、南のサーリウス大陸、西のヴェール諸島、そしてそれらの中心にある小さなネストル島。


 僕たちがいるのは、ノースタリア大陸の中央寄りの少し窪んだ地形にある街。フォルティーン共和国という国の首都“マレード”という港街だそうだ。

 

 元々フォルティーン共和国は“フォルティーン帝国”という名で、首都は大陸の中心部にある世界樹の近くにあった。

 しかし50年ほど前に当時の皇帝が何者かに殺害され、それが皇帝と親交のあったエルフ族長が犯人だという噂がきっかけで、ヒューマル族とエルフ族が対立して“人妖魔永獄戦争”が起きてしまったそうだ。


 初めはヒューマル族がエルフ族を押していたが、エルフ族長が命懸けで戦ったことでヒューマルの戦況が不利になり、拠点だった帝国は亡国手前まで追い込まれてしまった。


 最終的には和解して戦争は終わりを迎え、20年前に“フォルティーノ共和国”として名を変えた。


 そして統治する王は、聖女の末裔“セファード家”の者。エルフ側に和解を申し入れた彼らの功績が平和の象徴とするにはちょうど良かったのだろう。

 そして彼らが領地として治めていたこのマレードが首都として栄えることになっていったと。


 ……少し話が長かったので、軽く要約するとこういうことだった。


 「それにしても、めちゃくちゃ人がいっぱいだな。戦争があったなんて信じられないくらいに栄えてないか?」


 「首都に選ばれたのも勿論だけれど、戦争が起きる前から交易が盛んな街ではあったからね。この大陸で生活してる商人や冒険者が集まって協力したおかげで復興は早かったって聞いてるよ。」


 復興と聞くと、長い時間をかけて建物を建て直したりして少しずつ人が戻ってくるイメージだっただけに街の光景には驚いた。

 とはいえ、昔の日本でも商人が集まる場所は栄えたという記録自体はあるのだ。

 世界が変わってもそのヒトの営み関する基本は変わらないのかもしれないな。


 しばらく歩くと、どこからか美味しそうな匂いが漂ってきた。


 「屋台が見えてきたね。ちょうどお昼時だし、何か食べるかい?」


 「うーん、出来れば胃に優しいものをお願いしたいな」


 朝は薬草粥を食べてきたのでそれなりにお腹は空いているが、やはり数日食べてなかったこともあり油っこいものは控えたい。


 「そうだなぁ……あ、屋台で売ってる魚介スープにしようかな。あれなら魚の団子も入ってるから食べ応えもあるよ」


 俺たちはフードコートのように並んでいるテーブル席の中で、人通りの少ない端の席を見つけた。

 俺が席につくと「それじゃあ、買ってくるから待ってて」と言い、ミシェルは屋台が並ぶ人混みの中に消えていった。


.

読んでくださり、ありがとうございます!

ブクマ・評価・コメントなどもつけてくださると嬉しいです。よろしくお願いします(*´꒳`*)

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