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聖者のコウテイ 〜 ミコ様と忘却のエルフ 〜  作者: 飯咲優
第1章 秋に目覚めた物語
3/9

2.

よろしくお願いします!


 ……懐かしい夢を見た。


 俺が小学校から帰ってくると、父さんがテレビゲームをしていた。

 平日にしか休みを取れていなかった父さんは、俺が帰ってくるまでの時間は決まって【SUMMER BIRTH】というゲームをやっていたのだ。


『おとうさん、またそのゲームやってるの?この間、クリアしたって言ってなかった?』


『ちょっと気になることがいっぱい有ってね。周回プレイをして、やり直したいことがあるんだよ』


『周回プレイってなに?』


『同じゲームを何度もやるってことだよ』


『ふーん……面白いの、それ?』


 俺が聞くと、父さんは苦笑いをした。


『面白いのと面倒臭いの、どっちもあるね』


『……やる意味あるの、それ』


 父さんの回答に少し呆れつつも、俺は次の日の準備をした後、いつもの様に父にもたれかかる。

『キリのいいところまで!』と言いながらゲームをするその姿を眺めていた。


 父さんが休みの日に遊んでもらうのも好きだったが、こうして父親が“子供のように目を輝かしている瞬間”も大好きだったな。


 俺も大きくなったら、父さんに教えてもらいながらこのゲームをするのが夢だった。そう、夢だったのだ。


 (……父さん、なんで早く死んだんだよ。)


 そんなことを考えたって、何も変わらないってわかっているのに。

 

 何度も何度も、大人になってからも幾度も考えていた。


 ****


 ゆっくりと瞼を開けると、やはりそこは病室だった。

 転生したということをじわじわと実感する。そう思うと、なんだかわくわくもしてきた。


(確かに分からないことだらけだけど、主人公は“記憶喪失のニック”って設定だったし、どうにか生きていけるかな。)


 小さくうなずくと俺はまだ痛む身体をゆっくり起こして、心地の良い体勢に座りなおした。


(誰かが来る前に、現状の整理をしよう)


 ゲーム“SUMMER BIRTH”では、主人公ニックはゲームスタートして直ぐ、ベッドの上で目覚めて現状を知らされる場面がある。

 あの天パの女の子をがけ崩れから身を挺して守ったことで、ニックは記憶を失ってしまったことを、ゴードンさんから伝えられるのだ。


 だから、小さい頃の記憶が正しければ、その時に病室に居たのは、町医者のゴードンさんと天パの女の子の二人だったはず。


 けれど俺は目覚めたときに一番初めに会話をしたエルフの顔を思い浮かべた。

 確かに作中では見かけたことのある顔ではあるのだが、この男は最初の場面には居なかった気がするのだ。


(もしかして、俺が転生したことで何かストーリーが変わったってことなのか?)


 そんな考えに至るも、そもそも俺はこのゲームの物語を断片的にしか知らないのだ。

 もしかしたら俺の記憶違いということも有り得る。


(なんにせよ今はまだ分からないことだらけって事だな)


 現状を少しまとめたところで、ふと、あることが頭に浮かんだ。


(そういや“ニック”の両親はどこにいるんだろうか)


 ここでこうして生きているということは、“ニック”は誰かの子供だということだ。

 しかし、彼はこの病室で目覚めた後は確か旅に出るみたいな流れだったはず。


(それまでに両親に出会うことはあるのかな)


 今まで自分の両親とは辛い別れをしてきた自覚があるだけに、旅に出るならちゃんと送り出してもらえたらな。なんて勝手に思ってしまう。


(そう、だ)


 俺は“丹邦 崇紘”の人生が幸せだったとは到底思えなかった。

 だからこそ、“ニック”の人生まで辛い経験ばかりで終わらせたくはない。


 それに、内容なんて全然覚えてなんかいないけれど、このゲーム自体が【鬱ゲー】と呼ばれていたことは覚えている。

 つまり主人公は何かしらの不幸に巻き込まれるということなんだろう。


 折角、ゲームの世界に転生したんだ。俺は俺にできるだけのことをして、この人生が終わるときに幸せだったと思いたい。


(俺はこの“ニック”の人生を幸せにしよう……!)


 何が待ち受けているかなんて分からないこの世界で、俺はそう自分に誓った。


.

更新頻度は週1目標ですが、書けないこともあるんだなと学びました!

目標に間に合うように決意を、固めたい……!

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