なろう異世界史 物流編⑧
わしは拳を握りしめながら、必死にその視線を受け止めた。
「領主様、この街の人々のために、どうか土地を開墾させていただけないでしょうか……皆で作物を育て、少しずつでも生活を立て直したいのです」
領主は鼻で笑った。
「フン、食糧を分け与えるだけではなく、今度は畑を作るか。なるほど、貴様ら転生者は気前がいいものだな……まるで、神にでもなったつもりか?」
その言葉に、胸がズキリと痛んだ。
「いえ、わしは……ただ、皆が生きるために……」
「言い訳はするな」
領主の声が、鋭くわしを遮った。
「知っているか? ……お前たち転生者が現れてから、どれほどの者たちが職を失い、どれほどの家が崩れ去ったか……わかるか?」
その言葉が、わしの胸に突き刺さった。わしは何も言えなかった。
「何も考えず、利己的に転生者と手を組んだわたしたちにも非はあるのは認める。だが、そもそもおまえたちが余計な提案を持ってこなければ、こんなことにはならなかった」
領主はそう続けた。
その言葉に、わしの心は重く沈んだ。
「……」
わしは黙っていた。言葉を返せなかった。
「だがな……」
領主は深く息を吐くと、机の上に広げられた地図を指でなぞった。
「領民を見捨てるわけにはいかん。この街を守るのは、貴様ではなく、我々だ」
わしは顔を上げ、息を呑んだ。
「……つまり、許可をいただけるのですか?」
「フン……勘違いするな。お前に貸すのではない。領民のために土地を与えるのだ」
その言葉には、わしへの信頼など微塵も感じられなかった。
「忘れるなよ、転生者よ。どれだけ善人ぶろうとも、お前たちがこの街の者たちに与えた傷は、癒えることはない。……むしろ、また新たな傷を作るだけではないのか?」
冷笑が突き刺さる。
わしは拳を握りしめた。
「それでも……やるしかないのです……いえっ! やらねばならないのですっ!」
領主は目を細め、一瞬だけ沈黙した後、背もたれに深く寄りかかった。
「……好きにしろ。ただし、成果を出せなければ、お前の居場所はないと思え」
「……はい。覚悟しています」
そう答えながら、わしの心には、領主の言葉が重くのしかかっていた。
わしは、また誤った道を歩んでいるのだろうか……?
それでも、前に進むしかない。
背後で、領主の嘲るような声が聞こえた。
「転生者が、どこまでやれるか……見せてもらおうじゃないか」
わしは無言のまま、執務室を後にした。
申し訳ありません。
手違いでエピソードを間違えてました。
上げ直しました。
不手際により、申し訳なかったです。
今後、間違えがないように気をつけていきます。