なろう異世界史 物流編⑦
何をすればいいのかわからないわしに、エリーゼはひとつの答えを示してくれた。
「……その場しのぎじゃなくて、生きる力を与えればいい……」
彼女の言葉は静かだったが、わしの心に鋭く突き刺さった。
わしはふと、どこかで聞いた言葉を思い出す。
――困窮した者を救うには、『魚を与えるのではなく、取り方を教えよ』――
荘子だったか、孔子だったか……それとも、どこかの書物で読んだのか。
だが、今のわしにはその言葉の意味が、痛いほど理解できた。
ただ食事を与えても、それは一時しのぎにすぎない。
腹が満たされても、明日になればまた同じ苦しみが襲ってくる。
けれど、もし彼ら自身の手で生きる術を手に入れられたなら――
わしは顔を上げ、エリーゼをまっすぐに見つめた。
「……わかった。けど、どうすればいい?」
エリーゼは、少し考え込むように視線を落とし、やがて静かに口を開いた。
「まずは……仕事を作ること……かな」
「仕事……」
その言葉に、わしは思わず唸った。
この荒れ果てた土地で、一体何ができる? 資金も、人手も、何もかも足りない。
それでも、何かを始めなければならない。
わしは改めて周囲を見渡した。炊き出しを待つ人々の疲れ切った顔。
その背後には、崩れかけた家々が立ち並び、街は死んだように静まり返っていた。
「何かを変えなければならない」
魚ではなく、取り方を教えるために。
わしの心の奥底に、かすかに灯る決意があった。
その後のわしは、まず何をするかを考えた。
まずは、食ではないかと思い至る。
そこで、わしはこの街の領主に会おうと思った。
そして、開墾できる土地を皆で作物を作りだす。
そう思い至ったが、作物が実には時間がかかる。
その間の繋ぎをなんとかしなければとも考えた。
それは、わしがなんとかしようと決意する。
そして、わしは領主に会いに行った。
領主の館は、街の荒廃した景色とは対照的に、依然としてその威厳を保っていた。
重厚な扉が開き、わしは執務室へと通された。
中にいた領主は、痩せこけた頬に厳しい眼差しを湛えたまま、椅子から立ち上がることなく、冷たい視線を投げかけてきた。
「ほぉ、これはこれは……世界を破壊してくれた転生者様ではないですか。今更、償いだと勘違いなさって、炊き出しなどと言う安っぽい気まぐれな施しをなされている方が、今日は一体何のご要件で?」
彼の目は冷たく細められ、まるで虫けらでも見るかのようだった。