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なろう異世界史  作者:
22/38

なろう異世界史 迷宮篇④

 王国の首脳陣が「なんか違う……」と思いながらも、事態は進行し、市場はどんどん活性化していった。


 新しいペット商店が街に登場し、「カワイイは正義! もふもん!」という店がオープンした。この世界では、ペット=『もふもん』という呼称がすっかり定着し、街中には「もふもん店」が乱立していく。


 名前の由来はシンプルだ。どこかの転生者が「もふもふしてるモンスター」と言ったことで、その名前が広まったらしい。


 頭ハッピーセットメルヘンなのか? と思ったが……まぁ、それは置いておこう。


 「もふもん」の人気は急上昇し、街を歩けば必ずと言っていいほど、「もふもん」を連れた親子の姿を見かけるようになった。


 だが、生き物(魔物)を取り扱うには問題がつきものだ。


 しばらくすると、徐々に問題が発生し始めた。

 まず、カワイイからと手元に置きたがる勘違いな人々が多かった……それが間違いの始まりだった。


 当然、カワイイといっても生き物は生き物……

 毎回同じ容姿だと飽きも来てしまう。

 それに加え、エサ代や魔物の世話ができなくなる者が増えていき、やがて──


 捨てられた「もふもん」……いわゆる、「野良もふもん」が、街に現れ始めた。


 だが、元々は魔物だ。

 野生に戻されると、かなり厄介なことになる可能性が高い。


 捨てられた「もふもん」は、生きるためにエサを求めるようになる──


 他にも問題はあった。


 もふもん店で売れ残りの「もふもん」「老もふもん」などの問題もあった……


 こっちはほんとにひどい……


 不衛生な場所に詰め込まれ、何も処置もしない……

 エサ代さえ、ケチられて、痩せこけたもふもんたちが……


 もふもん店の闇の部分だ……


 そして、野良もふもんがあまりにも増えすぎたため、国はついに手を打たざるを得なくなった。

 地方行政も動き出し、もふもん店には管理責任を徹底させ、免許がなければ取り扱えないという新たな法律が制定された。


 だが、ここまで事態が大きくなる前に、事の発端を作った転生者が再び問題の中心に浮上してきた。


「お前、どう責任を取るつもりだっ! 今回の件、どういうつもりだっ!」と、王国の首脳陣は詰め寄る。


 だが、転生者はいつものように軽い。


「増えすぎたんだったら、迷宮に戻せばいいじゃない」と。


 そうして、溢れていたもふもんは魔物不足の迷宮へと戻されることになった……


 それでも、全てというわけには行かず、逃げ延びた「もふもん」たちは、山へ森へ川へと逃げていった。


 くしくも、魔物不足問題の解決に繋がっていくのだった。


 だが……


 ――冒険者ギルド近くの酒場で


「よう、景気悪いな、どうしたんだ?」


「え、ああ……ちょっとな」


 スカウト風の冒険者がエールを飲みながら答える。


「最近、迷宮に魔物……いや、もふもんが大量にいるんだよ」


「ああ、知ってる。迷宮に魔物が戻ったんだ。喜ばしいじゃないか」


「そうじゃねぇ……そうじゃねんだよ、問題は……」


「な、なんだよ。そんな悲しい顔をして」


「……きねんだよ」


「ん? なんて?」


「もふもんに攻撃できねぇんだよぉぉぉ!」


「ど、どういうことだよ……」


「あいつら、見た目がカワイイじゃねぇか……オレにはナイフで攻撃することが出来ないんだよ……可愛すぎて、オレの良心が痛むんだよ……おめぇはどうなんだよ?」


「オレか? オレはべつに……」


 そう言いかけたとたんにスカウトの冒険者が机を叩いた。


「おめぇは鬼かっ! なんで攻撃できんだよぉ! この畜生がぁぁ!」


「お、落ち着けって……」


「す、すまねぇ……だけど、このままだとオレは冒険者やめなきゃならねぇ……森や山にも、もふもんが溢れ出してても、何もできねぇ……オレ、どうしたらいいんだ……」


「……ま、まぁ、今日はオレの奢りだ。すこし頭冷やせよ。所詮、アイツらは魔物だぜ。退治してなんぼだろうが」


「……そんな風に割り切れねぇよ……」


 ――ゴキュ


 スカウト風の冒険者は胸の中がもやもやしながら、エールを飲み干した。


 そして、もふもん問題は予想外の方向へと向かうのだった。

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