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なろう異世界史  作者:
21/38

なろう異世界史 迷宮篇③

「皆さんも、もう知ってることですので、そうかしこまらないでください。ですが……ギルドとしては無視できない重大なことなのです。はぁ……」


「どういうことです?」


「では、初めからお話しますね。事の始まりは――」


 そこからお姉さんの話が始まった――


 異変が始まったのは『ティーバ王国とオサカ王国』からであった

 

 そのどちらの王国も、共に肥沃な土地と豊かな迷宮資源に恵まれた大国だった。


 だが、他国とは異なり、この二つの国は転生者との取引を早い段階で全面的に禁止していた。


 理由は明白だった。


 転生者が持ち込む「効率的すぎる物流技術」によって、地元産業が壊滅的な打撃を受ける未来が目に見えていたからだ。


 彼らは「効率厨」と揶揄されるほど、どこまでも合理性を追求する。

 自国の農業、商業、さらには迷宮経済までもが転生者の技術に飲み込まれることを、両国は恐れたのだ。


「転生者がいなくても、私たちは繁栄できる」


 王たちはそう信じ、地元資源を守ることを最優先とした。


 だが、転生者たちはそれに黙って従うような存在ではなかった。


「取引できないなら、迷宮ごと攻略して資源を奪うまでだ」


 彼らは効率を追い求めるがあまり、迷宮を次々と踏破し始めた。


 迷宮内の魔物を狩り尽くし、さらに迷宮外に広がる野生の魔物すらも目をつけた。

 次第に、近隣の魔物の生息数は激減していった。


 問題が顕在化するまで――


 当初、両国の王たちは事態を軽視していた。

 迷宮の魔物が少々減った程度で国が傾くことはない、と考えていたのだ。


 だが、それは間違いだった。


「報告します! 北部の農村で魔物による土壌改良が進まなくなっています!」


「南部の冒険者ギルドから、魔物由来の資材が不足しているとの訴えが届きました!」


 迷宮や野生の魔物たちには、生態系の維持に欠かせない役割があった。


 土壌の養分を循環させる魔物、天敵を抑制する魔物、さらには迷宮そのものを維持するための魔力供給源として機能する魔物――彼らの存在が絶たれることで、国の自然環境は徐々に歪み始めた。


 さらに悪いことに、一部の迷宮が「崩壊」し始めた。


 迷宮は自らを維持するために一定数の魔物を必要とする。

 魔物不足は迷宮の寿命を縮め、崩壊に至った迷宮は地下の魔力暴走を引き起こし、周囲の土地を不毛にしていった。


「このままでは、国が終わる……!」


 事態の深刻さに気づいた両国は、急遽「魔物保護条約」を制定した。


 狩猟を厳しく制限し、迷宮資源の採掘にも上限を設けた。

 

 だが、すでに手遅れだった。


 絶滅した魔物種もいくつかあり、生態系は大きく破壊されていた……


 流石に事の重大さに、首脳部たちは転生者に詰め寄ったっ!


「このような状況を作り出し、一体どうするつもりなのだっ!」と。


 だが、転生者はどこまでも軽かった。


 ――転生者たちの「次なる発想」


 そんな中、転生者の一人がふと呟いた。


「魔物が足りないなら……増やせばいいじゃない」と。


 それは冗談のような軽い一言だった。


 だが、この言葉が皮肉にも、両国の未来を大きく変えることになる。


 転生者たちは自らの知識を活かし、「魔物養殖」という新たな手法を編み出したのだ。


「繁殖だけでなく、魔物のデザインも可能だ」


「もっと効率の良い魔物を作れるはずだ。見た目も少し変えてみよう」


 最初は生産性向上を目指した養殖計画だったが、次第に転生者たちは「見た目」にもこだわり始めた。


 小さく愛らしい姿、ふわふわした毛並み、キラキラ輝く目――こうして誕生したのは、従来の魔物とは似ても似つかない「可愛い系魔物」だった。


「これ……カワイイ! カワイイは正義っ!」


「この子をペットにしたい!」


 人々は「カワイイ魔物」に夢中になった。


 特に貴族や富裕層の間で大人気となり、市場では高値で取引されるようになった。


 両国の首脳陣は、また頭を抱えた。


「なんか違う……」と。


 そんな思いとは裏腹に、市場は盛況になっていった。

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