なろう異世界史 迷宮篇
荒れ果てた「死の大地」にポツンと建つ一軒家。
その中で暮らしているのは転生者であるおじいちゃんだ。
今日もおじいちゃんの家を訪れたのは、元気いっぱいの孫、クリスだった。
「おじいちゃん、また来たよー!」
「おう、よく来たな。今日は何をして遊ぶか――」
そのとき、外から不穏な唸り声が聞こえた。
「おやおや、来やがったか。ディストラクションウルフの群れだな」
「えっ、ウルフ!? 大丈夫なの、おじいちゃん!」
「ふふ、これくらい朝飯前だ」
おじいちゃんは軽く杖を掲げ、呪文を唱えた。
瞬く間に空が暗くなり、強烈な雷がディストラクションウルフの群れを一掃する。
「ふぅ、これで静かになったな。……お、いい感じの肉が手に入ったぞ。クリス、今日は焼肉パーティーだ!」
「やったー! お肉、大好き!」
その後、おじいちゃんとクリスは家の庭で焚き火を囲み、焼きたての肉を楽しんでいた。
「おじいちゃん、この辺って魔物多いよね~。危なくないの?」
「そうだなぁ。今は多いけど、一時期は逆に魔物が少なくなったこともあったんだぞ」
「えっ、少なかったの? なんで?」
「魔物狩りが盛んになりすぎたからな。そのせいで迷宮が空っぽになるという異常事態まで発生したんだ」
「迷宮が空っぽ!? それ、なんか面白いね!」
「だろう? その結果、『魔物保護条例』なんてものが発動されて、魔物を増やすために転生者が手を加えると問題が発生したんだよ」
「なにそれ、めちゃくちゃうけるんだけど! おじいちゃん、もっと詳しく聞きたい!」
「ふふふ、聞きたいか? よし、話してやろう……この『迷宮の魔物不足問題』の全貌をな」
「わーい!おじいちゃんの話、大好き!」
こうして、おじいちゃんの奇妙で面白い異世界話が、夜遅くまで続いたのだった。
――あれは、物流問題が解決した後だから、今から450年前かの。




