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なろう異世界史  作者:
17/38

なろう異世界史 物流編⑯

「噂が本当なら、この街にはたんまり金があるんだろう? 全部よこせ! そうすりゃ命だけは助けてやる!」


 野盗たちが叫び、住民たちは恐怖で立ち尽くす。オレは剣を握りしめ、彼らの前に立ちはだかった。


「そんな噂、どこで聞いたんだか知らないが……ここには取れるほどの余裕なんてない。だから、帰れ」


「ハッ! 一人で俺たちを止められると思ってんのか? やっちまえ!」


 襲いかかる野盗たち。だが、オレは恐怖も迷いも捨て、ただ剣を振るった。

 刃のひらめきと共に、野盗たちは次々と地に伏していく。

 最後の一人が膝をついたとき、街の人々が歓声を上げた。


「転生者様! 助かりました!」


 彼らの声を聞きながら、オレは内心で安堵する。

 だが、どこか虚しさも感じていた。


 その夜、星空の下でひとり、オレはこれまでのことを振り返っていた。


「……もう、十分だよな」


 オレはここでできることをすべてやった。

 村は復興し、街へと成長し、多くの人々を救った。

 だけど、この場所に居続けることで生まれる問題や限界もある。


 そこで、オレは領主に会いにいくことにした。


 さすがに何も言わずに去るのは何か違うと感じたからだ。


 ――領主の館にて


 領主の館に到着すると、彼は迎え入れてくれた。

 オレの姿を見るなり、驚きと労いの表情を浮かべた。


「……あれから、ここまでよくやってくれたな。お前には最初、ただの厄介者だと思っていたが……さすがに見直したよ」


 その言葉を聞いて、少しだけ救われた気がした。

 だが、オレには決めていることがある。


「ありがとうございます。でも……もう、オレの役目は終わったと思っています。この街をさらに良い場所にするのは、領主様にお任せします。平和な街をお作りください」


 そう言って、オレは懐から一通の書簡を取り出した。


「これは、オレが考えた案です。転生者の力に頼りすぎないための制限やルールをまとめたものです。もちろん、参考程度で構いません」


 領主は書簡を受け取り、内容に目を通すと、目を見開いた。


「ほう……ここまで考えていたとはな。分かった、憂慮しよう。今までの働き、本当にご苦労だった。後は我々に任せてくれ」


 その言葉に、オレは深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


 すると、領主は少し笑みを浮かべて尋ねてきた。


「して、貴公はどうするのだね?」


 オレは答えた。


「……少し、旅をしてきます。この街のように、まだ苦しんでいる人々がたくさんいるはずです。できる限り、そのような場所で手を貸したいと思います」


 その言葉に、領主は静かに頷き、重々しい声で告げた。


「そうか……貴殿の行く道に幸あれ。どこに行こうとも、我々は忘れない。お前のことをな」


 ―――町に戻って。


 オレが神妙に何かを考えていることに気づきエリーゼが尋ねてくる。


「ご主人様、どうされましたか?」


 エリーゼが心配そうに近づいてきた。


「エリーゼ……オレは、ここを去ることにした」


「……それはどういう……?」


「この街はもう、オレがいなくてもやっていける。皆が力を合わせて成長したからな。でも、オレにはまだやるべきことがある気がするんだ」


 エリーゼはしばらく黙り込んだが、やがて微笑みを浮かべた。


「……ご主人様と一緒にいることで、私もたくさんのことを学びました。だから、どこまでもお供します。それが、私の決意です」


「……ありがとう」


 そして数日後。


 オレは住民たちに見送られながら、街を後にした。


「転生者様! 今まで本当にありがとうございました!」


「次にお会いできる日を楽しみにしています!」


 街の住民たちに見送られ、オレは門を越えた。

 胸に吹き込む清々しい風が、新たな旅の始まりを告げている。


 だが、どこか物足りなさを感じていた。


(ギゼルの姿が見えなかったな……忙しいのは分かってるけど、あいつの顔くらい見ておきたかった)


 そんな思いが胸をよぎったとき、門を越えた瞬間、オレは誰かが待っている気配を感じた。


 そこに立っていたのは――ギゼルだった。


「ギゼル……用事があったんじゃないのか?」


「ああ、お前を見送るって用事があったんだよ」


 ギゼルはふっと笑って、ポケットから小さな布袋を投げて寄越してきた。


「なんだ、これ?」


「旅に出るなら腹が減るだろう? 中にはちょっとした保存食と……まあ、お守りみたいなもんだ。捨てたら怒るからな」


 袋の中には、彼がいつも持ち歩いているアクセサリーに似たものが入っていた。


「ギゼル、お前……」


「別に深い意味なんかねえよ。ただの気まぐれだ。お前みたいな危なっかしい奴、ほっといたら死にかねないからな」


 そう言いながらも、ギゼルの声には微かに優しさが滲んでいた。


「……ありがとう。お前のこういうところ、悪くないな」


「余計なこと言うな、恥ずかしいだろうが」


 ギゼルはぶっきらぼうに言い放ち、目線をそらした。


「まあ、とにかく元気でやれよ。どこに行こうと、お前はお前だ。俺たちはここでやっていくから、心配するな」


「分かった。お前らなら大丈夫だな」


 短い沈黙の後、ギゼルが最後にぽつりと言った。


「次に会う時は、もう少しマシなもんを持ってきてやるよ。それまで死ぬなよ、転生者」


 その言葉にオレは頷き、背を向けた。


「じゃあな、ギゼル。また会おう」


「ああ、お前もエリーゼを大切にしろよ……」


「ああ、わかってるさ」


「ご主人様……」


 背中越しに手を軽く振りながら、オレは再び歩き出した。

 ギゼルの姿が小さくなっていくのを感じながらも、その不器用な優しさが胸を温めていた。


「さあ、次はどこへ行くかな……」


 新たな冒険の地平を見据えながら、オレは一歩を踏み出した。


 オレが街を去った後も、転生者としての影響は完全に消えるわけではなかった。

 街は復興を成し遂げたが、周囲の国々や村々に与える影響が少なからず問題として浮上してきたのだ。


 転生者が持つ能力と知識、それに伴う生産物や資源は、他国にとっても魅力的すぎる。

 だが、その流通が過剰になれば、地域の経済バランスが崩壊しかねない。

 そこで、街の自治組織は慎重に検討を重ね、いくつかのルールを設けることとなった。


 転生者からの買い取りの制限


 転生者が提供する物資や技術については、一ヶ月に一度、それも街の物価に影響しない範囲で取引を行うという制限が設けられた。


「必要以上の富が街に集中することは、結果的に争いを呼び込む原因になる」


 という考えからだ。


 災害時の例外措置


 地震や洪水などの災害時においては、物資提供の制限を一時的に解除する特例が認められた。

 これは、転生者の力を最大限活かし、被災者を迅速に支援するためのものだ。


 戦時における物資の取り扱い


 転生者が関与する物資の流通については、戦争時には街ではなくその国の指揮下に置かれることとなった。ただし、どの国も「転生者の資源を巡る争い」による負けを恐れており、実際には多くの国がそれぞれの方針で独自に転生者を管理する形をとっている。


 こうした制度が整備される中、街は徐々に安定を取り戻し、周囲の国々との信頼関係を築いていった。


 一方で、オレはそんな制度の整備を聞きながら、自分の選択が間違っていなかったことを確信する。

 オレが去ることで、街は自立の道を歩み始め、転生者が過度に影響力を持つことのリスクを回避できたのだ。


 新たな旅の途中で、オレは今、新たな街で新しい課題に向き合っている。


「転生者ってのは、便利すぎる存在だからな……放っておけば争いの種にしかならない。でも、今の街みたいに、みんなで考えながら未来を作るってのは、いいもんだ」


 空を見上げてそう呟きながら、オレはまた一歩を踏み出した。


 どんな街であれ、どんな人々であれ、手を取り合って歩む道が最善だと信じているからだ。

 そしてまた街を去った後、オレは新たな街へと足を運んでいた。


「次に向かう街は、ある疫病で苦しんでいると聞いた。今のオレにできることは何か……それを見つけるために、まずは一歩を踏み出そう。一緒に来てくれるか? エリーゼ」


「どこまでも、ついていきます。○○様」


 空を見上げ、未来に思いを馳せながら、オレは新たな冒険を始めた。


 ――それが、転移者がおこした出来事だった。


「なんか、暗い話だね。それにつまんないっ!」


「ははは、そうだな。クリスにとっては楽しい話ではなかったな」


「そうだよっ。もっと、こう、面白い話がいいっ。」


「ごめんごめん、今度はもっと、いい話を教えてあげよう」


「賑やかね。なにかあったのかしら?」


「あ、エリーゼおばあちゃん! こんにちわ!」


「あらまぁ、クリスちゃん来てたのね。こんにちわ」


「おばあちゃん、いつもきれいだね。クリスもおばあちゃんみたいになれるかな?」


「うふふ、そうね。クリスちゃんが優しい心を持っていれば、きっとなれるわ」


 そんな和やかな時間を過ごしていると、玄関のほうから軽快なノックの音が聞こえてきた。


「あら、誰かしら?」


 エリーゼが立ち上がり、扉を開けると、そこにはギゼルの家族とその娘、アニスの姿があった。


「こんにちは、エリーゼさん。ちょっと近くまで来たので寄らせていただきました」


「まあまあ、よく来てくれたわね。どうぞ、中へ上がっていって」


「あっ、アニスちゃん!」


 クリスが目を輝かせて立ち上がる。


「一緒に遊ぼう!」


「うん、遊ぼう!」


 アニスも嬉しそうに微笑んだ。


「賑やかになりそうね」


 とエリーゼは笑いながら子どもたちを見守る。


 子どもたちの笑い声が家の中に響き渡る中、エリーゼは心の中でふと呟いた。


 ――どんな困難があったとしても、こうした平和な日々こそが何よりの幸せだと。


「そうだ、エリーゼ。今度クリスを連れて、エリーゼの両親に会いにいかないか?」


「ふふ、そうね、きっと喜びますわ」


 外では小鳥たちが軽やかにさえずり、子どもたちの明るい声がさらにその音色を引き立てている。

こうしてまた、一日が穏やかに過ぎていくのだった。

ちょっと、暗い話ばかりになっちゃいましたので、駆け抜けました。


というか、物流ではなく物流破壊復興編みたいになってて、少しテーマから外れてましたね。


このあとも、考えてたのですが暗い話がどんどん続くだけなので止めました。


この盗賊たちも生きるために奪っていて、ほかの人たちを説得して、一緒にいられないので別の場所の一角で街の護衛を頼む話。

他の領主と転生者が手を結んでいて、かなり復興した時に現れ、その領主の困窮している領民のために食料を無償で供出せよといわれ、対立したりとかも考えましたが、どうも、暗い話ばかりになりがちなので止めました。

この街と別の畑へ街道を整備するためにこの街の領主と話したりとか。


すこぶる地味な話ばかりになるので、止めました。


読みたいという方がいれば、作ってみます。

ですが、今はここで終わります。


次の話は迷宮魔物不足問題です。どうだかわかりませんが、笑える話になってると思うので気楽に読んで頂ければと思います。

あと、色々と穴が満載だと思いますがツッコミはなしでお願いします。


それから、ご都合展開なのはご容赦の程を。

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