表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なろう異世界史  作者:
15/38

なろう異世界史 物流編⑭

「……ということだ。とにかく時間がない。崩壊が目の前に迫ってるんだ……皆を助けるなんて大見得切ったのに、現実はこれだ……本当、情けないな。はは……」


「………」


 エリーゼは神妙な面持ちでオレの話を最後まで黙って聞いてくれた。

 しばらく考え込むように目を伏せた後、静かに口を開く。


「それなら……皆にも相談してみてはどうでしょう? 結局、これは皆が抱えている問題なのですから。今の状況をきちんと伝えて、力を借りるのが一番ではないでしょうか?」


「……っ!」


 たしかに……オレやエリーゼだけじゃなく、皆の意見を聞くのも悪くないかもしれない。

 オレたちだけでは考えつかないことでも、皆の知恵を借りれば、何か解決策が見つかるかもしれない。


「そう……だな。聞いてみるかっ! ありがとな、エリーゼ。助かるよ」


 オレがそう言うと、エリーゼはホッとしたように微笑んだ。


「ええ、ご武運を。……ご主人様なら大丈夫です」


 その笑顔に、少しだけ心が軽くなった気がした。


「よし、早速行ってくる!」


「はい、いってらっしゃい」


―――村の一角で。


「………」


 聞いてみるか……


 ……そう意気込んできたはいいものの、どうやって切り出せばいいんだ……?


 えっと、「炊き出しに必要な資金が足りません。ごめんね、てへぺろ」、……うん、そんな言い方したら殺されるな……


 じゃあ、どう言えばいい……?


「うう~ん……話の切り口が……」


 そんなことを悩んでいると、ギゼルがこっちに気づき、軽く手を挙げながら話しかけてきた。


「おや、転生者様じゃないか。何やら悩んでる様子だけど、金の問題かい?」


「え……? なんで、知ってるんだ……?」


「あちゃ~、やっぱりそうなのか……」


「えっ……えっ? どういうこと?」


「最近、ずっと難しい顔してたろ? それに、話しかけても生返事ばっかりだったし。なんかおかしいなーって思ってたんだよ。で、試しに ‘食料か金の問題か?’ ってカマかけてみたら、図星だったわけだ」


「うっ……ほんと、すまない。食料すら用意できないなんて、オレってクズだよな……」


「稼ぐ手段がないんだ、多少の蓄えがあったところで、いつかはなくなるもんさ。それに……これだけの人数だ。実際、あんたが助けてくれなきゃ、とっくに俺たちはくたばってたよ……オレたち、十分あんたに助けられてるんだ。だから、自分を責めないでくれよ」


「ギゼルさん……」


「よ、余計なこと言わせるなよっ! それより、問題があんだろ? まず、それを考えようじゃないか……みんなでな」


 ―――ある会議にて。


「さて諸君に集まってもらったのは他でもない。今日の議題はこれだっ!」


 ――この街がヤヴァイ!――


「いや、もうとっくにヤヴァイじゃないですか? これ以上何があるんですか?」


「まぁ聞け。何を持ってヤヴァイと言ってるのか、教えてやろう。それは……」


「「それは?」」


「金がないっ!」


「どストレートだなっ! おいっ!」


「てか……普通に話さないか?」


「そ、そうですね……すいません」


 オレは焦りすぎて、なんか変なテンションになってしまったらしい……


「つまりは、金がないってことか?」


「はい……」


「それで、オレたちの食料の供給が出来ないってことか?」


「はい、その通りです……すいません……ごめんなさい……無能で申し訳ございません」


「おいおい、そう卑屈にならなくてもいいだろ……ったく、転生者様はめんどくさいヤツだな」


 ギゼルはオレの言い方に、拍子抜けた感じで言ってきた。


「なんだ、そんなことか。もっと、鬼気迫る何かがあるのかと思ったじゃないか……ほんとに」


「え……お金がないんですよ? 食料だって……」


「転生者様は冒険者やってたんですよね?」


「してましたね」


「なら、森に入って、動物なり、魔物なりを狩ってきて食料にすればいいのでは?」


「ハッ! て、天才かっ!?」


「それに、オレは山菜やキノコとか見分けられるから、狩りをしている途中に探して来てもいい」


「なら、オレは近場の川で魚を釣ってくるわ」


 ―――ガヤガヤ


 と、人々は自分に出来うる限りの知識や能力を使って、さまざまな方法で食料を確保しようとしてくれようとしていた。


 オレには、こんな簡単な方法すら思いつかなかった……


 ――相談してみれば?――


 そのエリーゼの提案の本質を、ここに来て初めて実感する。


 ――一人で抱え込むな。周りに相談しろ――


 その本当の意味が分かったのかもしれない。


 オレは、協力してくれる人々に感謝の念を抱いたのだった。


「な、案外簡単な話だろ」


 ギゼルは軽くウィンクをして、オレに話してきた。


「ああ、話して良かった……ほんとによかった」


 と、胸の中でほんとにそう思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ