無慈悲
これでカプセルは砕ける。白虎も鳳凰はそう思っていたが、カプセルにはヒビすら入らなかった。
周囲に張られた不可視のバリアによって防がれたからだ。
「いぃっ!? なんだよ、これ!」
「あれは、超能力のバリアです!」
「バ、バリアァッ!? そんなのアリっすか!? あ、そっか! だから龍先輩、天窓から出たんだ! これで扉を塞がれてたから」
青龍の行動に合点がいった白虎だったが、手を打ってる余裕はない。念動力に捕まり、宙に浮かされてしまう。
この技には見覚えがあった。英理村で黄泉が村人をゾンビの群れに放り込む時にやった技だ。
ここにそういった類いの化物はいないが、代わりに巨大カプセルを乗せても耐えられるほど頑丈な床がある。
(ヤッベ! このままじゃ転落死だ!)
死のビジョンが見えた白虎は、天井付近から落とされたものの、咄嗟に受け身をとったことでダメージを最小限に抑えられた。
「セ、セーフ……何すんだ黄泉! 死ぬとこだったじゃねぇか!」
怒鳴ったところで、意識がないから反応も無いし、ジリ貧であることにも変わりはない。
フィクションの巨大兵器顔負けの存在を前に、白虎は僅かな知恵を振り絞って考えるが、そんな時間を与えてくれる慈悲も、相手には無い。
超能力による金縛りで、白虎の動きを封じると、そのまま念動力でカプセルから目と鼻の先のところまで移動させられる。
何のために? カプセルの中にいる黄泉の意外と穏やかで愛らしい寝顔を見せるためではない。確実にトドメを刺すためだ。
「あ、大牙さん! エネルギーが急速に高まっています! 急いで離れてください! でないと、直撃します!」
「いぃっ!? 無理! 無理無理無理無理っ! こんなの、無理っすよーっ!」
喚きながら身をよじり、金縛りから逃れようとするが、それこそ無駄な足掻き。無情にも超念動波が、至近距離で放たれた。
白虎を呑み込んだ滅びの光は、大穴が開いた第1棟に再度命中。屋上ごと上層階を消し飛ばした。
あんなものをくらっては、無事では済まない。白虎の治癒を断念した鳳凰は、非力ながらも応戦しようと、ソルレーザーガンを強く握りしめた。




