命を削る光
向こうも、白虎を最重要警戒ターゲットと認識したようだ。鳳凰を無視して、一斉に襲いかかる。
それでも少年は怯まない。ビームをギリギリで躱しつつ、近付いてきた子機を払い、黄泉の元へと迫っていく。
その奮戦ぶりに苛立ちを覚えたようだ。
突如、発光したカプセルから、程なくして広範囲の念動光線・超念動波が放たれたのだ。
遠隔操作兵器とは比べ物にならないほどの火力。それを肌で感じ、ギョッとした白虎は、紙一重で回避する。
「あっぶねー……先輩、大丈夫っすか?」
「な、なんとか。発光段階から嫌な予感がしていましたので」
「そうっすか。それなら良かっ――って、なんじゃこりゃあーっ!」
鳳凰も無事だったことにホッとしかけた白虎だったが、彼女がいた方向を二度見し、驚愕する。
入口のみならず、第1棟の外壁の一部も吹き飛んでいたからである。
「なんつー威力だよ」
「直撃していたら、跡形もなくなっていましたね」
考えただけで冷や汗ものだ。それだけに厄介でもある。
ただでさえ、遠隔操作武器に手を焼いているというのに、ここにきて、戦艦の主砲クラスの高出力ビーム。油断していたら、どちらかの装備の餌食となる。
かといって、武装を無力化することばかりに気を取られていたら近付けない。
どうしたもんかと白虎が悩んでいると、鳳凰が攻略の糸口を見つけた。
「もしかしてですけど、あのビーム、連射できないのでは?」
「というと?」
白虎が尋ねると、鳳凰は自らの推理を語った。
あれだけ膨大なエネルギーを放つとなれば、それだけチャージに時間を要する。
そうでなくても、敵の攻撃は全て念動力。カプセル内にいる黄泉から、無理矢理エネルギーを搾り取って行っている。
中でもあの技は火力が高い分、エネルギーの消費量も激しい。連発すれば、それだけ彼女の命を削ることになる。
そのようなことを、あの京介がするわけがない。貴重なサンプルを自ら失うようなものだからだ。
「つーことは、黄泉の負担にならねぇよう、じわじわとエネルギーを吸い取って、そっからぶっ放してるってことっすか」
「おそらくは。遠距離操作武器は、その間の時間稼ぎも兼ねているのでしょう」
ならば、攻略法は1つしかない。超念動波の発射直後を狙って、一気に接近すればいい。今がちょうどその時だ。
やることが決まった白虎は、鳳凰に超念動波のチャージを知らせる役を任せ、突っ込んでいった。
例の兵器が邪魔をするが、そんなものでは白虎の勢いは止まらない。光線を避けながら自らの間合いまで接近した彼は、渾身の力で掌打を叩き込んだ。




