眠る妖女
やる気満々の白虎を先頭に進むこと数分。第1棟と第2棟を繋ぐ連絡橋を渡りきったところで、青龍達は巨大な扉に道を阻まれた。
ジェット機でも搬入するのかと言いたくなるほどの大きさと重厚感。それが第2棟の入口にあるのだから、露骨に怪しい。
とはいえ、ここを通らなければ、先へは進めない。青龍達は、未来のハッキングで扉のロックを解除してもらい、中に突入した。
その矢先だった。侵入者を感知したのか、突然、○ンダムで出てくるような遠隔操作兵器が起動し、問答無用で光線を乱射してきた。
幸い、紙一重で回避できたため、誰一人ケガをせずに済んだが、人とは違う存在の奇襲に、全員面をくらう。
「危ねっ!」
「今のはいったい……」
「あっ! 龍さん達、見てください! 部屋の奥のカプセルの中!」
何かを発見し、指を差す鳳凰。
そこにいたのは、液体入りカプセルの中に入った昏睡状態の黄泉だった。
「黄泉!」
「どうやら、まだ意識はないみたい」
「では、あのスレイブフェアリーのような兵器は別の誰かが操作を?」
鳳凰の疑問に、白虎は首を横に振る。
「いや、あれを動かしてんのもあいつっすよ。さっきぶっ放たれた光線、色とかの感じからして念動光線みたいなもんでしょうから。んなのを扱えるのは、あいつぐらいのもんです」
「そんな! じゃあ彼女は、意識がないことをいいことに操られてるってこと!?」
「あるいは、防衛本能がそうさせているのか」
いずれにしても、利用されているという点では同じである。
極悪人として知られた黄泉とはいえ、人を人とは思わない非道な仕打ち。京介にとってモルモットとはそういう存在なのだろう。
だったらなおのこと、このままにはしておけない。それを誰よりも思っていたのは、彼女と因縁浅からぬ関係にある白虎だった。
「先輩達、ここは俺が囮になります。その間に、黄泉が入ったカプセルの後ろにある扉を通って、先に行ってください」
「待ってください! それはあまりにも危険すぎます! 下手をすれば大牙さんが……」
「無茶と無謀は俺の専売特許っすよ。大丈夫。俺は死にません。俺がタフなことぐらい、先輩達もよく知ってるっしょ?」
腕に力こぶを作って、ニコッと笑う白虎。
少々背負い込んでる気もするが、それだけ黄泉に対する気持ちが強いということなのだろう。




