誰がために振るう拳
侵入後、4人は未来のハッキングで施設内の防衛システムを、前衛で暴れる青龍と白虎とそれを援護する鳳凰の活躍で、デミ・ミュータント部隊らを無効化しながら突き進んでいく。
今のところ全員、無傷。ただ、白虎だけは少し浮かない顔をしていた。
「大牙君。もしかして、神楽さんに頼まれたことで悩んでるの?」
「叶先輩……うっす」
「やっぱり、難しいんでしょうか? 彼女を改心させるなんて」
本人に会ったわけではないが、所業や性格については青龍達から聞いている。それだけに、難易度が高いのでは? と、鳳凰は思っていたが、
「あ、そっちの方はノープロブレムっす。もう決めたことなんで」
白虎は意外にもあっけらかんと答えた。
「そうなのですか? でしたら、何に?」
「俺が悩んでるのは、そこに至るまでの話っす。加減知らずの白虎流護皇死神拳で、目的を果たせるかどうか。それがどうしても不安で……」
相手の状態にもよるだろうが、周囲への影響が全く無いとは言い切れない。ましてや、救うとなると……
そのことに思い悩む後輩に、青龍は自分なりの考えを織り交ぜつつ、先輩としての言葉をかけた。
白虎流護皇死神拳は、神の末裔として、国の行く末を決めてきた天皇を守護するために編み出された拳法だったが、第二次世界大戦の敗戦によって時代は変わり、天皇は神の血族であることを否定され、国民の象徴となった。
同時に、民主主義となったことで、神性と実権を失った天皇は、徐々に国民から重要視されなくなっていった。
ならば、白虎流護皇死神拳は、現代で何を護るべきなのか? 天皇が神の子孫でなくなった時に、一緒に滅ぶべきだったのか? そうでないのなら――
「大牙君。誰も救えないようじゃ、君の拳はただの見せかけの偽物だ。そうじゃないって言うんなら、救えるものは全部救って証明してよ! それが君の流派・白虎流護皇死神拳なんだろう?」
青龍から活を入れられ、ハッとした白虎は、誰がために拳を振るうべきなのか悟り、闘志を漲らせた。
最早、彼に迷いも不安も心配もない。己が信じる拳を振るうことを改めて誓った白虎は、雑兵を蹴散らしながら、駆け抜けていく――――




