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闇黒と紅血の斬り合い

 そうして、息が切れ始めるのを待っていた源士郎は、鮮血の大太刀の峰を親指で擦って着火すると、


「秘剣・煉獄刀(れんごくとう)! せぇい!」

 と、言いながら、渾身の力で袈裟斬りをした。


 幸い、体を真っ二つにされることは無かったが、全力で振り抜かれた刀の威力は凄まじく、右肩を粉砕骨折した黒猫は悲鳴を上げる。


「ほう、拷問に耐えられるとほざいていた割に、痛覚は人並みにあるのだな」


「うぅ……うるさい……当然でしょ? 私のことを化け物か何かだとでも思ってたの?」


「それもそうか。ならば、せめてもの慈悲として、貴様を苦痛から解放してやろう。その首をはねることでな!」

 源士郎は黒猫の首を躊躇なく切断しようと振りかぶったが、黒猫とて黙ってやられるつもりはない。

 応龍虎徹に闇を纏うと、


「闇夜流剣術、一の太刀。群狼牙突(ぐんろうがとつ)!」

 ガラ空きになった胴体に向かって、カウンター気味に刀を突き出すと同時に、腕と胴体に10発の突きと闇エネルギーの斬撃波を一瞬の内に叩き込み、源士郎を門の近くまでぶっ飛ばした。

 さしもの紅血の鎧も、渾身の群狼牙突を受けては無傷というわけにはいかないらしく、闇の連続突きをモロに受けた衝撃で、源士郎は血反吐を吐く。


「くっくっく、そうこんとな。殺し甲斐がない」


「あれでもダメか。だけど、ヒビは入った。だったら――」

 手応えを感じた黒猫は、治癒能力で肩を治療すると、応龍虎徹を鞘に納め、ヨルムンガンドスラッシャーを装備する。


「そうくるか。いいだろう。毒を浴びる前にケリをつけてやる」

 受けて立つ姿勢を見せる源士郎に対し、黒猫は一気に距離を詰め、ヨルムンガンドスラッシャーで斬り裂こうとした。


 が、そうくることをこの男は読んでいた。


血潮(ちしお)

 先程吐いて手に溜めた血反吐を何十倍にも増大させると、それを血の大波にして放った。

 狙いは視界を遮ること。それを直感的にわかった黒猫は、迷わず血の波を両断したが、相手の方が一枚上手だった。

 血潮で姿を隠している間に背後をとった源士郎は、


紅蓮(ぐれん)(かせ)

 と言って、左手から血を放ち、それを手錠のような形に変形、硬質化させて、黒猫の手と体をまとめて拘束した。


「人間の攻撃の大半は手を使うものだ。素手にせよ、武器を扱うにせよ、な。そこを封じられると、攻撃も防御もできなくなってしまう。まぁお前の場合、足技もあるから油断はできんが、それでも来るとわかりきっている攻撃だ。避けることなど造作もない」

 道理としては、何1つ間違ったことは言ってない。ただ、それを仇敵の口から聞かされるのは、実に腹立たしい。

 それでも認めざるを得ない悔しさから、黒猫は下唇を噛む。


 そんな犯罪者の表情が見ることができて、源士郎はご満悦のようだ。そろそろ決着をつけようと、煉獄刀による雷神閃の構えをした。

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