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闇に溶け込む色

 しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 突如、鶉をアシストしていたサーチライトが次々と破壊され、乗っていた下っ端達も1人残らず斬殺されていった。

 後に残ったのは、朱雀を囲む炎と元通りの闇のみ。想定外の事態に鶉は、

 

「ちょっ、何これ!? いったい、どうなってんの!?」

 と、困惑していると、彼女の前にそれをやってのけた犯人が、闇の中から赤熱する刃を持って現れた。


「悪ふざけはそこまでだよ、ウズラ。君のオモチャは、僕が壊した」


「人兄ぃ!?」

 そう。サーチライトを壊した犯人は、人志だった。朱雀と鶉の戦いを目にして、加勢にきていたのだ。


「いつから!? さっきまでいなかったじゃん!」


「君は知らないかもしれないけど、僕は1度、雲雀と龍君に殺されて復活した。そうなることによって、初めて会得できる力もある。この意味、君にはわかるかい?」

 彼らしいキザで回りくどい言い方だが、鶉はすぐにピンときた。


「ま、まさか、焔司郎のオッサンと同じで……」


「その通り。僕もミュータントになったんだ。得た能力は色。全身と武器をカメレオンのように変色させることで、周囲に溶け込む能力さ」

 これまで、使う場面がなかったから使わなかった新たな力。それがこのタイミングで発揮されたのだから、鶉としては面白くない。


「んもう! 邪魔しないでよ! せっかくいいところだったのにー! これじゃ、影もロクに踏めないじゃん!」


「そのためにやったんだよ。君の能力を封じて、雲雀のアシストをする。それが僕の役目だ」


「は? 何言ってんの? ヒバリンならナパームボールの直撃と、感情操作を受けて今頃――」


「ふっ、はたして、それはどうかな? だろう? 雲雀」

 鶉の言葉を鼻で笑うと、人志は炎に向かって語りかけた。


 すると、彼の声に応えるように、朱雀旋裂棍を手にした朱雀が炎の中から悠然と現れた。


「あぁ、せやな。人兄ぃ。ってか、そないな能力があるんやったら、もったいぶらんとさっさと使いぃな。どんだけカッコつけたいねん」


「そういうつもりじゃなかったんだけどね。まぁいいじゃないか。役には立ったんだし」


「それはそうやけど」

 危うく死にかけたというのに、朱雀は日常会話のようなテンションで会話をしている。その健在っぷりに、鶉は唖然となる。


「嘘! なんで生きてんの!?」


「アーホォ。朱雀が焼け死んだら本末転倒やろが。それになぁ、あんたがどんだけうちの心をひっかき回して、絶望や恐怖を植え付けたところで、うちは自分から死のうなんて思わへん」


「だから、なんでっ!?」


「あんたには一生わからへんやろうな。自分さえ良ければオールOKなあんたには、な。うちはあんたと違って、守りたい奴や大切なもんをぎょーさん背負って生きとんねん。そのうちが背負うてるもん全部捨てて、自分だけ『怖い~』とか、『もう嫌や~』とか言うて、簡単に死ねるわけないやろ! うちとあんたとじゃ、背負ってるもんの重さが、覚悟が違うんじゃ! ボケがっ!」

 これが今の朱雀の命をかけて戦う理由。

 死体とのディープキスを目的としていた自己中心的な殺人者の姿など、もうどこにもなかった。

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