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血塗れのサーカス

 こんな風に遊ばれ、情けない姿を晒すかつての仲間の姿に、向こうは萎えてしまったようだ。さっきまでケラケラ笑っていたのに、鶉はスンと冷静になる。


「つくづく思うけどさー、ヒバリンの攻撃って単調で読みやすいよねぇ? 怒った時なんか特に」


「……何が言いたいねん?」


「え? わかんないの? つーまーりぃー、ヒバリンは一応プロかもしんないけど、あたしと違って二流以下。頭より先に手が出て、軽くあしらわれる道化(ピエロ)がお似合いってことだよ」

 元とはいえ、プロの殺し屋としての誇りを傷つける発言。ナメきった態度も相まって、黙ってはいられない。


「言いたい放題言いおってからに、このボケが……調子に乗んなやイカレピエロ! 誰が二流以下やっ!」

 怒りに任せて朱雀は斬りかかったが、冷静さを欠き、単調になった刃では、狂気のクラウンを自称する少女の肌を掠めることすらできない。


「そういうところが、だよ」

 鶉はバク転でヒラリと回避すると、ナイフを投げた。

 防刃効果のある装備のおかげで、刺さることはなかったが、脳内麻薬でリミッターを解除された超パワーで投擲されたナイフの衝撃は強く、朱雀は軽く吹っ飛ばされる。


「くっ」


「あーぁ、ちょっと買い被りすぎてたかなぁ? ブランクがあるとはいえ、ヒバリンなら、もうちょっとできると思ってたんだけどなー」

 大切な者を守り、生きて日常に帰るため、こっちは必死で戦っているのに、ふざけてばかりでちっとも本気でやり合おうとしない相手からの屈辱的な言葉に、朱雀ははらわたが煮えくり返りそうになる。


「ガッカリ。もういいや。つまんないし、トドメを刺しちゃおう。あ、でも、安心して。昔のよしみってことで、ヒバリンは特別にあたしの超必殺技で殺してあげる」


「それのどこに、安心できる要素があんねん」


「キャハハハハ! それもそっか。ま、その辺の文句はスルーってことで……照明部隊、モードBC! ライト、フルパワーで!」

 サーチライト搭載車の方を振り返った鶉が、手を上げながら、大声でそう言うと、合図を受け取った下っ端が、サーチライトの光の強さを最大にした。

 それによって、朱雀の影がより長く、より濃く映し出されたのを視認すると、鶉は彼女の影を踏み、


「レディースアーンドジェントルマーン! 血塗られたサーカスにようこそ! ほんの僅かな時間ですが、どうぞ楽しんでいってください。んじゃ、レッツゴー!」

 と、挨拶するや否や、両手に持っていた全てのナイフを、影踏みで固定された朱雀めがけて投げ放ち、それらがヒットする寸前のところで、ナイフごと彼女の体を蹴飛ばした。


「ちょっ、誰が帰っていいって言ったの? あたしのサーカスは途中退席禁止! 全部見てくまで帰さないよ!」

 自分で影から離したくせに、鶉はわざとらしい演技でそう言うと、再び朱雀の影を踏んでから、脳内麻薬を全開にし、銃と手榴弾によるジャグリングからの乱れ撃ちをした。

 それらの手持ちの弾薬が尽きると、鶉は下っ端からパスしてもらった新たなナパームボールに飛び乗り、


「さて、ナイフ投げ、ジャグリングときて、いよいよお待ちかねの大トリ、大玉。これがあたしの必殺技・ブラッディサーカスだよ! そんじゃ、イッツ! グランドフィナーレェッ!」

 決めゼリフと共にそれを蹴り転がした。

 朱雀に当たった瞬間、ナパームボールは爆発。彼女がいた場所一帯が灼熱の炎に包まれる。

 これでも十分やりすぎなのだが、鶉はダメ押しとばかりに、感情の能力で朱雀が自ら命を絶つよう操作する。


「これでよし、っと。じゃあねヒバリン。やっぱあたしの方が一枚上手だったね。さーてと、あとは炎の中から真っ赤な血がドバーッて出るか、真っ黒焦げになったヒバリンの死体が出てくれば文句ナシ――」

 自分の勝利を信じて疑わない鶉は、望みの光景を目にすることで、朱雀が死ぬことを待ち望んでいた。

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