かき乱される感情
決着をつけようと真剣に戦い、得物を振るう朱雀に対し、鶉は脳内麻薬と影の能力を使い、のらりくらりと躱していく。
こんな風に遊ばれていては、短気な朱雀が腹を立てないわけがない。
「あのドアホォ……! どこにおんねんっ! 隠れとらんで出てこいっ!」
いつの間にか姿を消した鶉を探そうと、朱雀が呼び掛けると、
「ここだよー。ジャンジャジャーン!」
影の中から返事と共にヌルっと現れた鶉が、飛び出てくる勢いを利用した斬り上げをしてきた。
幸い、紙一重で避けることができたが、影からの奇襲に朱雀は面を食らう。
「危なっ! あんた、うちの影の中に!?」
「影が重なってる時だけできる高等技術だよ。なのにさー、避けないでよね。超ショック」
「知るかボケ! しゃべっとったら、舌どころか首飛ぶで!」
朱雀は反撃とばかりに朱雀旋裂棍を振ったが、これまた回避されてしまう。
「わっとっと。もう、息つくヒマもないなぁ。ヒバリンってば、気ぃ短すぎ。あたしが何かしたー?」
「十分したやろ! イカレピエロ! 前回のこと忘れたとは言わさへんで!」
「そのくらいのことで、グチグチ言わないでよ。体だけじゃなく、心も小さいんじゃないの?」
「あんたにだけは言われたぁないわ!」
ごもっともな反論と共に、朱雀は攻撃を仕掛けようとした。が、
「あーもう、うるさいなー。少しは落ち着きなって。ヒバリン」
宥めるような鶉の声を聞いた途端、心が穏やかになっていき、戦意を喪失していく。この感覚には覚えがあった。
「あんた、まさかぁ……」
「ピンポーン。感情の能力だよーん。忘れてたでしょー? にしても、ずいぶんとのほほーんとした顔になったねぇヒバリン。何か持ってきてあげよっか? お煎餅? チョコスティック? それともポテチ?」
「うーん……せやったら、ポ○リとポテチのうすし――」
そこまで言いかけたところで、我に返った朱雀は、
「――って、何言わせとんじゃ、アホウズラーッ!」
ちゃぶ台をひっくり返すような勢いで怒鳴りながら、戦意を取り戻した。
その一連の言動が、おかしくてたまらなかったのだろう。鶉は腹を抱えて笑い転げる。
「キャハハハハ! ウケる! ヒバリンの、のほほーんとした顔からのノリツッコミ、超ウケる! ねぇねぇ、もっかいやって。さっきのやつ、もう1回だけ」
「やるか、ドアホッ! おちょくんのも大概にせぇ!」
「いいじゃん。減るもんじゃなし。あたし、笑い死になら大歓迎だよ。キャハハハハ!」
「このアホンダラがぁ、えぇかげんにしさらせ!」
朱雀は怒りを力に変えて切り裂こうとしたが、抱腹絶倒する彼女から、不意に投げ放たれた手榴弾によって、攻撃をキャンセルさせられてしまう。




