朱雀と道化
と、2人は、壁に囲まれているのをいいことに、人目を忍んで愛を育んでいたが、外はそれどころではなかった。
「おじちゃん達ぃ、もう終わりー? つまんないんだけどー?」
好き勝手に暴れ回る鶉によって、周囲が屍で埋め尽くされていたのだ。
「こいつ、遊んでられるのも今の内だ! 総員、撃て!」
「ハッ!」
小隊長の指示を受け、兵士達は一斉に撃ったが、大玉に乗って不安定なはずの鶉に掠りもしない。
「ほんと、芸がないなー。もういいや。まとめて片付けちゃおー。それ」
そう言って鶉は、眼前にいる兵士達に向かって、大玉を蹴り転がした。
「何のマネだ?」
「待て! まさか……」
「そゆこと。ナパームボール、ドカーン」
小隊長が胸騒ぎを覚え、鶉が不敵な笑みを浮かべた直後、大玉だった焼夷弾が爆発。建物と門の間の敷地を燃やし、範囲内にいた人間を1人残らず火だるまにする。
「うーん、絶景かな絶景かな。ま、ウォーミングアップはこんなもんでしょ。さーて、次は誰にしよっかなー? もう少し歯応えのある相手ならいいんだけ――」
スプリンクラーが作動するまで、門衛所の屋根の上に退避した鶉は、額に手を当てるという分かりやすいポーズをしながら、周囲を見回した。
それだけ目立つ行動をしていれば、彼女が見つけないはずがない。
「そこまでや、イカレピエロー!」
鶉の姿を視認した朱雀は、最短距離で接近し、斬りかかった。
間一髪のところで手にしたナイフで受け流し、宿敵と対峙した鶉は、無邪気に笑った。
「わお! そっちから出向いてくれるなんて、嬉しいなぁヒバリン」
「そりゃどーも」
「けどさー、いい加減覚えてよ。あたしはピエロじゃなくって、ク・ラ・ウ・ン。そこんとこ、間違えないでよね」
「細かいことをいちいち気にすんなや。どうせ今日で、永遠のお別れになるんやからな」
「あ、それもそっか」
朱雀の言葉に、鶉はごもっともといった感じで手の平をポンと叩く。
「ともかく、あっちは柚と飛鳥さんに任せた。うちらは心置きなくケリをつけようやないか。ウズラ」
「そうこないと、って言いたいとこだけどさ。ちょっとだけ待ってくんない? ヒバリン」
朱雀旋裂棍を構え、臨戦態勢に入っていたのに、待ったをかけられ、出鼻を挫かれた朱雀はイラッとする。
「なんや? この期に及んで命乞いか?」
「いや、殺気立ってるとこ悪いんだけどさぁ、あたしまだ、準備できてないんだよね」
「は? 知らんがな。てか、さっきまで暴れとったくせに、準備もへったくれも――」
朱雀はそう言ったが、鶉の耳には届かなかったようで、
「はーい、みんな集合ー!」
「って、人の話を聞けや! ボケッ!」
と、朱雀のツッコミを無視して何かを呼び込んだ。




