集う鬼火
それに対して、フローラは迎撃することも、回避することもなく、
「そう思い通りにはさせませんわ!」
身に着けた特殊スーツの性能を信頼し、真っ向から蛍火を突破すると、カウンターとばかりに火炎放射をした。
攻撃自体は炎のミュータントの特性らしく、自身を火に変化させることで無効化されたが、強行突破をしてくるとは思っていなかった焔司郎は驚嘆する。
「ほう、あれに耐えるとは。予想外だ」
「見くびらないでほしいですわ。この耐火スーツは、摂氏6000度にも耐えられる特別製。これがある限り、私に敗北の二文字はありませんわ!」
「それは……どうかな?」
そう言って、焔司郎は隠し持っていた散弾銃を構えるや否や、何やらゼリー状の物体を発射し、フローラご自慢の特殊スーツにへばりつかせた。
「つっ、何ですの!? これは!」
「なんということはない。ただの粘着性の油だ」
「油!?」
「あぁ。ただし、戦闘機のGでもとれないほど強力な粘着性がある代物だがな。そのため、迂闊に触るとトリモチのようにとれなくなってしまう」
精神的、技量的にも圧倒的優位に立っている焔司郎は、そう忠告したが遅かった。
フローラの手は、粘着油をとろうとして、アーマーと接着していた。
「――と、人が親切心で言っているのに聞かないとは、困ったお嬢さんだ。待ちたまえ。すぐに助けてあげよう」
焔司郎は呆れた様子で言うと、自身の前方に蛍火を集め、巨大な火の玉を形成した。
「ま、まさか……」
「如何にも。油を消し去るには、火がうってつけだ。蛍火、鬼火爆散!」
焔司郎は手を突き出すモーションをし、集めた巨大火の玉をフローラにぶつけた。
当たった瞬間、火の玉は粘着油に着火し、ガソリンに引火したかのように爆発、炎上。特殊スーツのおかげで黒焦げは免れたものの、至近距離での爆発の衝撃には耐えきれず、鋼鉄の壁まで吹き飛ばされたフローラは、肋骨や尾てい骨等を数本折る重傷を負った。
「くっ! うぅっ!」
「殺すまではいかなかったか。意外と頑丈だな。とはいえ、あと1,2発といったところか。それを受ければ、特注のスーツとやらは木っ端微塵に砕け散り、君を炭と化すことができるだろう」
正解だった。今の一撃で既に亀裂が生じ始めている。反論できないフローラは、忌々しそうに舌打ちするしかなかった。
「図星か。憧れていても、所詮この程度だったか。ならば、ここらで幕引きとするとしよう。さらばだ。お嬢さん」
焔司郎はそう言うと、また蛍火を集めだした。鬼火爆散でトドメを刺すつもりのようだ。
避けようにも、打撲と骨折のダメージがあり、素早く動けない。
(ここまで、のようですわね。ルドルフ、お父様、申し訳ありませんわ。お母様、今、そちらへ……)
葬送の炎を前に、死を覚悟したフローラは、静かに目を閉じた――




