開戦の焔
これには、焔司郎も感嘆の声を漏らす。
「ずいぶんと大掛かりな仕掛けだな。相当かかっただろう? これ」
「大したことはありませんわ。元々はあなた方を一人たりとも逃がさないために、ペガサスさんが事前に仕掛けていたものを拝借し、突貫で改造したものですから。数千万ほどしかかけていません」
はした金のような感じで言っているが、十分大金である。
「私のためにそこまでしてくれるとは、素直に嬉しいな。だが、こんな厚さ数メートル程度の鋼の壁で、私を閉じ込められると思っているのなら、大間違いだぞ?」
壁をノックしながらそう言う焔司郎の顔は、口調以上に自信に満ち溢れていた。
「容易く脱出できるとでも? 不可能ですわ」
「ただの人間なら、な。いいだろう。論より証拠。改めて、私の炎の素晴らしさを見せてやろう」
そう言って焔司郎は、指を鳴らすと同時に、火の玉を大量に生み出すと、
「蛍火……宴火!」
技名と共にそれらを四方八方へと飛ばし、背後にあった鋼鉄の壁を溶解、爆裂させた。
「ふむ、やはりこんな無粋な素材では、芸術的な炎には至らないか。とはいえ、これでご覧いただけただろう。私の言うことが、ハッタリではないということを」
「…………」
瞬時に2000~3000度を超えるほどの高温にでもならない限り、あぁはならない。火のミュータントのポテンシャルの高さに、フローラとルドルフは平静を装いつつも、戦慄する。
「だが安心したまえ。私とて大人だ。決着もつけずに逃げるつもりはない」
「そうですか。でしたら、最後まで付き合ってもらいますわ!」
フローラは勇気を奮い立たせてそう言うと、一直線に駆け抜けつつ、フラメ・ブリューテンブラットを散布したが、焔司郎はそれを紙一重で避け、
「やはり未熟。まだまだ青いな。蛍火、雪炎舞」
お返しとばかりに、初対面の時にも見せた淡雪のような蛍火を降らせて、フラメ・ブリューテンブラットを相殺した。
「それが君の武器か。なるほど、薬品の匂いがしたところから察するに、触れたものを一瞬にして火だるまにさせる化学兵器か。ならば、触れる前に燃やせばいい。簡単な話だ」
「やはり、一筋縄ではいきませんわね」
「そう言う君も、筋は悪くない。特に芸術面は目を見張るものがある。特殊能力を持たないただの人間が、よくその域に達したものだ。ならば、もう少し本気で相手をするとしよう。蛍火、灼熱烈火!」
焔司郎は素直に称賛すると、無数の蛍火を発生させ、フローラめがけて一斉に放った。




