動き出す強敵達
こうなるともう止まらない。正面玄関で暴れる朱雀とそれに便乗する黒猫と黒鳥を恐れたデミ・ミュータント達は、残った東側から侵入を試みようとするが、そこにも、
「雷神閃!」
「クリエイトウォーハンマー」
「幻・魔・龍ーっ!」
京士郎や零、恋といった猛者がいる。彼らの前では、為す術なくやられる運命なのだ。
こうした不甲斐なさすぎる戦況と甚大な被害に、とうとうあいつが痺れを切らした。
「もう! 何してんのよあいつらー! だらしないにも程があるってーの! オッサン、あたしもう行くよ? いいよね?」
「こうなってしまってはやむを得ん。好きにしろ」
「そうこなくっちゃ! んじゃあ、いっくよー! キャハハハハ!」
『待て』が解かれたことで上機嫌な鶉は、手榴弾等といった武器をジャグリングしながら、大玉の上を歩き、戦場へと向かっていった。
「保護者も大変だな」
「そう思うのなら、貴様も行ったらどうだ? 協力者が率先して動かんというのは、どうかと思うぞ?」
「そうしたいのは山々だが、君らの因縁に水を差すようなマネはしたくない。私が代わりに指揮を執っておくから、君は自らの手で目的を果たすといい。その方が効率的だ」
焔司郎の言い分には裏がある。そんなことは源士郎とてわかっている。そうでなくても、重罪人の言うことを素直に聞くのは癪に障る。
とはいえ、ここで押し問答をしていても、埒が明かない。そのせいで、ターゲットを殺せなくなってしまっては元も子もない。
冷静に考えてはみたものの、こうする他なかった。
「……いいだろう。貴様の口車に乗ってやる。だが、これだけは覚えておけ。我々を出し抜き、首尾よく逃げおおせたとしても、特捜5課の追跡からは逃れられんということをな」
「肝に銘じておくよ。さぁ、行きたまえ」
どこまでも余裕な犯罪者の態度に、内心イラッとしたものの、源士郎は気持ちを切り替えて前線に出た。
そうして、乱戦のどさくさに紛れて、紗那がいる棟の近くまで来たところで、源士郎は門の方を振り向き、肩を竦めた。
予想通り、焔司郎が舌の根も乾かぬうちに指揮を放棄して、いなくなっていたからである――