どう転んでも地獄
これで、西側からの侵入や屋上を直接攻撃することは難しいと、彼らも悟ったはず。
となると、残った入口からの突入を図るしかなくなるが、そこで彼らは、身を以て知ることになるだろう。どこを通っても、地獄に通じていると。
「お、やーっと来よったか。釣られてたにしても遅すぎや。下っ端は下っ端らしく、ちゃっちゃと来んかい」
「黙れ小娘! 調子に乗るな!」
「それはこっちのセリフよ。少しは身の程というものを知ったら? バカ」
「言わせておけば……! いくぞ、お前ら! あの女共に我らの力を思い知らせてやれ!」
朱雀と黒猫からの挑発にカチンときたデミ・ミュータント達は、全体の1/3に相当する数を武器に、一斉に襲いかかった。
普通の人からすれば、腰を抜かし、失禁するところかもしれないが、彼女達は違う。
「考えなしに突っ込んでくるだけなんて、救いようのない人達……黒鳥の湖」
「いくでぇ! 最新バージョンのぉ、朱雀絶影やーっ!」
朱雀と黒鳥が、多数戦向けの技で片っ端から蹴散らしていき、
「……ミドガルズオルム」
黒猫が、地中に通したヨルムンガンドスラッシャーの先端からうねるような闇と毒の混合エネルギー波を放って、残存兵を討ち取っていく。
「軽い。それに威力も切れ味も前とは比べ物にならない。ありがとう、みんな」
地面からヨルムンガンドスラッシャーを引き抜いた黒猫は、素晴らしい武器を作ってくれた面々への感謝を呟いた。
「そっちはどう? 雲雀さん」
「こっちもえぇ感じや。ただ、ショットステークが2発しか撃たれへんのはネックやな。考えて使わんと、戦ってる最中に回収しにいかなあかんくなる」
この短時間で強化&重量化された得物の扱いをマスターした朱雀でも、こればっかりはどうしようもないようだ。あくまでショットステークは奥の手。ペガサスもそのつもりで製作している。
「そう。だったら、もう少し練習しといたら? その間、私が相手しとくから」
「おい、ちょお待て。独り占めは許さへんで」
「心配しなくても、そっちの本命まで横取りするつもりはないから。いくよ。アビスキリング・ヒドラ!」
黒猫は、朱雀からの制止の声を無視すると、アビスキリングからの毒散布で、眼前にいる敵集団に黒縄毒の苦しみを与えた。
「中途半端に生き残っちゃったんだ。可哀想。即死してれば、こんな苦しみを味わうこともなかったのに。でも、安心して。私は優しいから、みんなを楽にしてあげる」
そう言って黒猫は、ヨルムンガンドスラッシャーを外すと、菊一文字零式・真打と応龍虎徹を手にし、
「この2振りの刀で、ね。黒猫流抜刀暗殺剣、最終究極奥義……」
と、静かに言うと同時にデミ・ミュータントらの間を風のように駆け抜けていき、
「天上皆無閃……滅」
というシメの一言を発しながら、納刀した。
直後、その場にいた敵は1人残らず塵と化し、夥しい量の血溜まりしか残らなくなった。
京士郎の必殺剣である天上皆無閃。それを二刀にし、手数を倍にしただけでこうなるとは、まったくもっておぞましい限りである。
もっとも、一連の攻撃を目にしていた朱雀は、ご立腹な様子だが。
「こら柚! ちったぁうちらのことを考えて攻撃しさらせっ! アビスキリング・ヒドラの毒で、危うく死ぬとこやったで!」
攻撃範囲内ギリギリにいたのに、躊躇なく黒縄毒を使用した。それが怒りの原因である。
「生きてたんだからいいでしょ? 細かいことは気にしない。それに、わかりやすく技名を言ってからやったはずだけど?」
「そういう問題ちゃうわ! ドアホッ!」
「まぁまぁまぁ。2人共、いがみ合いはそのくらいにして。今は――」
黒鳥に仲裁された2人は、門周辺に目を向けた。
お仲間があんな凄惨な死に方をしたというのに、性懲りもなく向かってきている。敷島一派はまだ諦めていないようだ。
「それもそうですね。雲雀さん、やるんなら彼らに、ね」
「チッ、あとで覚えとけよ。ボケ猫」
黒猫への捨て台詞を吐いた朱雀は、向かってくるデミ・ミュータントら相手に八つ当たりを始めた。




