ゴミはゴミ箱へ
弾薬補充とサポートのためちついて回る従者さえも振り回すフローラの暴れっぷりに、ペガサスと玄武らは苦笑していたが、彼らも呑気に高みの見物を決め込んでいる場合ではない。
先程の策で、敵をまとめて殺すことはできたが、それでもせいぜい数百人。事前に勘づいたり、仲間が炭化していく光景を目にして、誘導されなかった者もいる。
そういう輩は被害を抑えようと、一旦、紗那を無視して、拘置所内の階段を駆け上がり、屋上にいる指揮系統を潰そうとしてくるに違いない。
となれば、最低でも1人はいるはずである。
「ヒャッハー! ようやく俺の時代がきたー! さぁ、覚悟しやがれぇっ!」
施設外から直接乗り込んでこれるほどの跳躍力を持ったデミ・ミュータントが。
「やっぱり来たか。ま、予想通りだね」
「なに、すかしてんだ天使のガキィ! そんな生意気な口がきけないよう、まずはてめぇからバラバラにしてやるぜー!」
跳躍力のデミ・ミュータントは、足のバネをフルに使った刺突で、ペガサスを刺そうとした。
単身でここまで一気に上ってきた度胸は天晴れだが、やることが無謀かつ無策極まりない。勢いだけで突撃してくる無鉄砲な敵に、ペガサスは心底呆れ果てる。
それは、側にいた玄武も同様であった。
「やれやれ、わかってないね。ゴミが主役を張れる時代なんかないんだよ。ゴミが行き着く結末はただ1つ……ゴミ箱だけさ」
武文がそう言った直後、息を殺して潜んでいた十三が男の腕を掴んで一本背負いで投げ飛ばし、そこを王龍の蹴りによる追撃が、土手っ腹にクリーンヒット。
敵陣一番乗りを誇っていたデミ・ミュータントは、数秒もしない内に屋上の外へとふっ飛ばされた。
「十三さん、王龍さん。手筈通りやってくれましたか?」
「おう、ちゃんと頭から落ちるように蹴っ跳ばしたぜ」
「あれじゃあどうすることもできねぇよ」
2人の言う通りだった。デミ・ミュータントの男は必死に踠いたが、跳躍はおろか方向転換することもできない。
「いくら跳躍力のデミ・ミュータントと言えど、空気を蹴って跳ぶことはできないでしょう。天使でもないのに空を舞うからですよ。身の程を知れバカ」
「ま、そういうわけだから、ゴミはゴミらしくゴミ箱に落ちろ」
ペガサスと玄武からの冷たい言葉に、絶叫するほど悔しさを爆発させた男は、そのまま地べたに叩きつけられ、絶命した。