応龍の守り刀
それでも、頑固な柚が決めたことだ。これ以上の口出しは無意味と悟った雲雀達は、渋々認めるしかなかった。
「とまぁ、色々言いたいことはあるだろうけど、僕からは以上だよ」
『僕からはって……あんただけじゃないの?』
装備開発はペガサスの専売特許だと思っていた愛花からの問いにペガサスが頷くと、前に出た龍が背中で隠していたあるものを見せた。
「これは……?」
「ペガサス君と大牙君と久保田さんに協力してもらって打った刀・応龍虎徹だよ」
そう。龍がペガサスに頼んでいた頼み事とは、この刀の作刀依頼だった。
実は、龍の刃物屋の師匠にあたる老人は、虎徹を打った刀匠の子孫であり、彼の元で1年間弟子入りし、継承した技術で、龍は商品となる刃物を製作していた。
ただ、どんなに優れた腕があっても、ゼロから刀を作るとなると、通常は一週間以上かかってしまう。
そこで、ペガサスの光の力と、大牙と十三の馬鹿力を借りることで、時間を大幅に短縮。ものの5~6時間で完成させたのだ。
とはいえ、この作業によって時間をロスしたのは、紛れもない事実だが。
「――って、ちょお待て。刀っちゅーことは、まさか……」
「あぁ、うん。だからさっき、『壊されそう』って言ったんだけど――」
嫁に対し、申し訳なさそうにそう言うと、龍は納刀された応龍虎徹を持ち主の目の前に差し出した。
その人物とは……既に菊一文字零式・真打という愛刀がある柚だった。
「柚、使ってくれる?」
「私?」
「やっぱりか! こらドアホ龍! 柚に作るんやったら、うちにも作れっ! こんなん贔屓やわ! 不平等やわ!」
今にも朱雀旋裂棍を持って暴れ出しそうな雲雀を、奏と未来とペガサスらが必死に宥める。
その一方で、柚も新しい刀を打ってもらったことに、嬉しさや喜びといった感情はなく、ただただ不満げな様子だった。
「……菊一文字を、パパの形見を捨てろっていうの?」
「そんなつもりはないよ。僕がどれだけ良質な刀を打ったところで、柚のその刀に対する愛着には勝てないことは知ってる。それでも、受け取ってほしいんだ。君の愛刀を2度と折らせないためにも」
「どういうこと?」
首を傾げる柚からの疑問に、龍は応龍虎徹を作ろうと思った動機について語った。
基地内での源士郎との戦いを思い返した龍は、彼が行使した発火能力の正体を突き止めていた。
その推理が、もし正しければ、彼の手によって、菊一文字零式・真打が再び折られてしまうことになる。
また、終の太刀・輝夜をするにしても、特有の反りの深さがあるあの刀では、急所を外しかねない。そうなっては、黒龍の時のようにスキだらけになるのがオチだ。
その点、この応龍虎徹は反りが浅いため、輝夜の成功率も高く、玉鋼に龍人化した龍の龍鱗を混ぜ込んだことで、戦闘機や10メートル角の鋼鉄の塊を微塵切りしても、刃こぼれ1つしない地上最強の耐久性を持つ刀となっている。
故に、守り刀としてうってつけなのだ。




