連れてこられた場所は……
先程まで聞こえていた商店街の活気に満ちた声が消え失せ、代わりにジェットエンジンによる爆音が轟く。
周囲の環境の激変ぶりに、龍達が何が起きたのかわからず呆然とする中、例の気配の主はしゃべり始めた。
「ふぅ……流石にこの人数を瞬間移動に巻き込むのは、なかなか骨が折れるなぁ……あぁ、もう外していいよ」
聞き慣れた声に、誰よりも早く反応した雲雀は、アイマスクを雑にとるなり、その人物にツッコミを入れた。
「――って、ちょお待てぇ! あんた、何しとんねん。ペガサス!」
「あはは、やっぱり声でバレたか」
見破られたペガサスはテヘッといった感じで、笑って誤魔化す。
そのやりとりを聞き、気配の正体がペガサスだと知った他の家族達は、安心してアイマスクを外す。
「あ、ほんとだ」
「やぁ龍君。それとご婦人方と娘さんも。元気そうで何より」
「ペガサスさんこそ。でも、いいんですか? 紗那さんのことで忙しいのでは?」
「確かにそうなんだけど、そうも言ってられない状況だからね。それはさておき、みんなに問題です。ここはいったいどこでしょうか?」
これまた突然すぎるクイズタイムに、首を傾げた青山一家は周囲を見回した。
ミサイル程度じゃビクともしなさそうな頑丈な建物に、格納庫にズラリと並ぶ戦闘機。そして、緑を基調とした軍服を着た兵士達。
それら全てが、龍にとっては見覚えのあるものばかりだった。
「ここ……大阪空軍訓練所だ」
「ピンポーン」
「なんやて!? ちゅーことはうちら、日本に帰ってきたっちゅーことかぁっ!?」
そう。青山一家は武文の思惑とペガサスの瞬間移動によって、2度と帰るまいと誓った祖国に帰ってきてしまっていたのである。
「みたいね。武文君?」
全員の不満を代弁するように、柚は武文を睨みつける。
「まぁまぁまぁ。それについては、中に入ってからちゃんと説明するから、とりあえずついてきて。ここじゃ暑いし、ね?」
エピウスに比べれば気温こそ低いが、湿度が倍以上違う。釈然とはしないが、素直に従った方がいいと考えた一家は、ペガサスから入れ替わった翔馬の案内で、大阪空軍訓練所に入った――――