手に余る毒
この説明に、黒縄毒のヤバさを完全に理解した雲雀は、念のため質問した。
「……なぁ、1つ聞きたいんやけど、解毒剤ぐらいあるんやろな?」
「無いよ。この毒を解毒できるのは、神様しかいない。そして、神様は忙しい。だから……」
そこまで聞いたところで、雲雀はペガサスの胸ぐらを両手で掴み、乱暴に振り回した。
「なんちゅうもん作っとんじゃ、このイカレ天使っ! こんな危険物作らせて、うちらがくたばったらどないすんねん! そうまでして、うちらを絶滅させたいんか!? アァッ!?」
「だ、誰も『共倒れになってくれ』なんて言ってないだろう? それに、その毒は僕もくらうってさっき――」
「死にたがりの殺したがりのあんたのことや! 自分が死んでも、人さえ滅ぼせりゃえぇと思っとるやろ! そうはさせへんで! 柚! ブラック・ナイトの連中には悪いけど、断りっ! そんな百害あって一利なしの毒の塊なんか、さっさと返品した方が身のためや!」
自分達の安全と親切心から、雲雀はそう警告し、受け取り拒否を促したが、当の柚はそれを拒んだ。
「そのつもりはないよ。せっかくみんなが作ってくれた物だし、私が気を付ければ済む話だから。それに、こんな危なっかしい物を扱えるのは、私ぐらいしかいないでしょ?」
自らの腕に絶対的な自信があるからこそ出る言葉。一流のプロとしてのプライドが、彼女の言葉に有無を言わせぬ重みを与えていた。
「……わかった。そこまで言うなら、僕は止めないよ」
「ありがとう。龍君」
「じゃあ、設計した僕から念押しに1つ。たとえ君がデビル化していても、この毒は確実にくらう。夜叉用にお尻につける場合も含めて、細心の注意を払うように。いいね?」
「わかってる。自分の得物に斬られるなんて、そんな間抜けな死に方をするつもりはないよ」
そう言う彼女には、防刃スーツである黒い猫がある。
故に、自らを斬って自滅することは、ほぼほぼ無いだろうが、万が一ということがある。雲雀達の心配と不安が解消されることはなかった。




