拷問で得た情報
そこに更なる追い討ちをかける情報が、朝風呂を終えて入室した柚の口からもたらされた。
「残念だけど、もう1つ悪い知らせよ」
「悪い知らせ?」
「例の件で何かわかったんだね?」
「えぇ」
話が見えない大牙や王龍らはキョトンとしている。
「例のって?」
「彼女には、一昨日捕らえた妨害部隊の隊長を拷問してもらってたんだ」
「つーことは、そいつはもう……」
「えぇ。営倉で血肉と化しています。吐くまでに少々時間がかかってしまいましたが、貴重な情報を教えてくれました」
顔色1つ変えず淡々と言う柚を見て、その隊長の男がどんな拷問を受け、どんな末路を迎えたのか想像してしまった宙や渓、十三達は吐き気を催す。
「それで、その情報っていうのは?」
「今日の午後8時に、敷島一派は大阪拘置所を襲撃しようとしているらしいの」
「なんだってそんなとこを?」
柚からの報告に、アレックスら数人はピンときていなかったが、面と向かって京介と対話していた龍達には心当たりがあった。
「まさか!」
「えぇ。おそらくだけど、紗那さんを抹殺するためだと思う。彼らにとって彼女の存在は、位置情報を知らせる邪魔者でしかないから」
ラボの場所を秘匿にするほどチキンな京介のことだ。その判断自体は何ら不思議ではない。
「敵の数は?」
「犬飼源士郎と道重鶉、それと火口焰司郎率いるデミ・ミュータント部隊、総勢1万人。これは、彼らの私設部隊の9割強だそうです」
想像を絶するほどバカげた物量に、大半の者が耳を疑い、
「ハ!? たった1人を殺すために、そんな大部隊を!? Crazy‼」
「まったくですわ。非効率としか言い様がありません」
と、口々に言っていたが、冷静に分析していた武文ら首脳陣と柚だけは違った。
「……いや、それぐらい必要なんじゃないかな?」
その根拠は、何度も触れている通り、彼の小心っぷりにある。
紗那が狙われていると知れば、龍を始めとする面々が、彼女を守ることになる。そうなった場合、少数で暗殺に行かせても、失敗する恐れがある。それでは犬死にだ。
目的達成の成功率を上げるには、物量頼みの人海戦術しかない、というわけである。
「だったらこっちも……」
「あぁ。頭数を増やせばなんとかなる。武石中佐、それとアレックス軍曹。お前らの隊も出れるようにしとけ」
「はっ」
「イエッサー!」
岩男からの命令に、渓とアレックスは迷うことなく了解する。
「いいんですか? アレックス軍曹。他国の問題にグリーンベレーが関与して」
「奴のやっていることは、最早一国の問題ではなぁい! 国際問題だ。ならば――グリーンベレーとして祖国の為に戦い、1人の男としてフィアンセの母国を守るだけだ!」
グリーンベレーの象徴たる帽子を被り直し、そう言い切るアレックスの顔には、かつての驕りや恐れは微塵もなく、軍人としての誇りと男の覚悟に満ちていた。




