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焔を司る者

 そう考えていたのだが、キョトンとした顔をして、数回瞬きをした鶉は、どういうわけか狂ったように笑いだした。


「何、気色悪いバカ笑いしとんねん、鶉!」


「そこまでおかしいことを言ったつもりはないけど?」


「キャハハハハ……! いや、十分おかしいよ。人兄ぃの方こそ、頭のネジが外れてんじゃない?」

 笑いすぎて過呼吸気味になっている鶉の言葉に、朱雀達は首を傾げる。


「どういう意味だい?」


「つーまーりー、人兄ぃ達はもう、その女の能力を使えないってわけ」

 悪意に満ちた鶉の笑みと態度に、ハッとした未来達は、全員の影に目を落とす。

 芹の影が()()()()()()()。全ての影を踏んでいると見せかけて、彼女の影だけ踏まれていないのだ。


 こんな小細工をする理由は1つしかない。円滑に連れ去るためだ。黒猫達は芹を守ろうと鶉の出方に注目するが、目の前の道化に意識を向けすぎたせいで、重大なことを見落としていた。

 影は本人が動いたりしない限り、明かりの下では微動だにしないもの。それが揺れているということは、芹自身が怯えて震えているか……天井のライトとは別の光源、例えば蝋燭とかといったような火がかなり近くにあることを意味している。


 そのことに、人間以上に自然のエネルギーに敏感なペガサスが気付いた時には遅かった。

 雪のようにゆっくりと降って消えていく小さな火の玉の出現に気を取られた隙に、芹が当て身で気絶させられ、強奪されてしまったのだ。

 鶉と同じタイミングで入室し、気配を消して、ペガサスらの背後からずっと機を窺っていた1人の男の手によって。


「井川さん!」


「ご苦労様。助かりましたよ。焔司郎さん。」


「なに、協力者として当然のことをしたまでだ。この程度、私からすれば造作もない」

 口調からこれでもかというほど自信が滲み出ている40手前ぐらいの男。この男こそが、今回の依頼の3人目のターゲット・火口焔司郎だ。

 その手際の良さ、何よりこの場にいる誰にも気配を悟らせなかったあたりからして、只者ではない。

 強敵と思われる人物の登場に青龍達は警戒心を強める。

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