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サンプルだったからこそ

 中でも1番激怒していたのは、恋だった。


「さっきから聞いてたら、『サンプル』『サンプル』って。いいかげんにしなよ! 人のことを道具のように扱うなんて、最っ低っ!」


「すごい剣幕だね。余程、その手の人種がお気に召さないようだ」


「まぁね。私を半妖にした、どっかのクズで傲慢な妖魔の王を思い出すし、そうでなくてもムカつくからね」

 それが怒りの理由である。


 恋は生まれた時から半妖だったわけではない。

 元は天使や悪魔、霊が見えるだけで、それ以外はどこにでもいる普通の人間だった。

 そんな彼女に転機が訪れたのは5歳の夏。天国と地獄の戦争を目撃し、不思議そうに見ていた恋に、悪魔が投擲した槍が直撃。心臓を引きずり出されて絶命するという惨たらしい最期を迎えた。

 そこに、偶然居合わせた妖魔の王が、気まぐれとして血を与えたことで、恋は半妖として復活したのである。(ちなみに、この時の副産物として、自身の胸から幻魔を生み出せるようになった)


 最終的に、翔馬達の力を借りて、恋は自身の運命を狂わせた妖魔の王を討ち取ったが、サンプルや道具扱いする人種に対する憎悪は、今なお残っている。


「そうか。君もサンプルだったのか。それなら、再びサンプルになる気はないかい? 半妖である君の血、不老長寿の力があれば、僕の研究は飛躍的に進む。大丈夫。悪いようにはしないから」

 そう言い、京介は手を差し伸べたが、恋が拒絶するよりも早く、瞳と零が割って入る。


「あのさぁ、オッサン。悪党の『悪いようにはしない』ほど、信用できないもんはないっつーの」


「えぇ。だから、指1本触れさせない。私の大親友を好き勝手できると思わないで」

 2人の麗しい友情を目にしたペガサスは、フッと微笑むと、瞳の隣に移動する。


「その通りだね。それに、最も嫌いなタイプからの誘いに乗り、悪事に荷担するバカがどこにいますか?」


「そういうこと。わかったら、さっさと降参しなよ。今なら、幻魔龍1発で許してあげる」

 恋は一応の情けをかけてそう言うが、それは彼女だけの話。

 黒猫達は、京介の返答を待つまでもなく、臨戦態勢に入っている。


「敷島博士、お願いします。今すぐ研究をやめて、罪を償ってください」

 これが最後の説得かもしれない。そう思いながら、未来は必死に説得した。

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