こだわる理由
「それはそうと、君達はどうやってここを特定したんだい? 警察や軍にもわからないようカムフラージュしていたはずだけど」
「それは――」
青龍がそう言いかけたところで、部屋の扉が開き、複数の人間が入ってきた。
知らぬ間に応援を呼ばれたのかと思った芹は、ビクッとするが、
「それは、あなたが自ら強化を施したデミ・ミュータントである彼女が、僕らを導いてくれたから、ですよ」
会話に割り込んでそう代弁したのは、ペガサスだった。後ろには彼と共に行動をしていたメンバーもいる。これで全員集合だ。
「……なるほど。利根川清志郎の懐刀だったあの子が。収監されていれば手出しはできないと放置していたが、天使である君がいれば、それも可能となるわけか。これは迂闊だったね。早急に対処しないと」
口ではそう言ってるが、慌てる様子がない。そこに言い様のない不気味さを感じるものの、ペガサスは対話を続ける。
「敷島博士。こちらからも質問があるのですが、よろしいですか?」
「どうぞ」
「何故、井川さんをデミ・ミュータントにしたんですか? 言い方はアレですけど、彼女はどこにでもいる一般人です。そんな少女をわざわざ捕らえ、デミ・ミュータントにしただけでなく、彼女の両親を殺してまで支配しようとした。そこまで固執する理由がどこにあるんですか?」
全員を代表してぶつけたペガサスの問いに対し、京介は、愚問と言わんばかりに呆れの溜め息を吐く。
「何故って、決まっているじゃないか。現状、彼女しかいないからだ。言霊能力を有したデミ・ミュータントの基礎遺伝子を持つサンプルが、ね」
「たった、それだけの理由で?」
「解せない、か。けれど、そこまで追い詰めないと、彼女は真に能力を発揮することができない。そうなっては、有益なデータもとれないんだ」
「どういうことですか?」
どんな答えが返ってくるのか、おおよそ察しはつくが、未来は敢えて尋ねる。
「君達も知っての通り、彼女、井川芹はイジめられ続けてきたせいか、すごく悲観的だ。その性格が、言霊能力の力をスペック以上まで引き上げてくれる」
そこには同意できる。ネガティブ思考の塊である彼女と言霊能力の相性は、良くも悪くもピッタリであり、一種の災厄に近い力を持っている。
「彼女のクラスメートを捕らえ、何人かに試してみたけど、誰も言霊能力を発現するには至らなかったし、他の能力を身に付けたとしても、彼女には遠く及ばない。これほど素晴らしいサンプルを有効利用しない手はないだろう?」
京介のことだから、その実験台にされたクラスメート達は、もう……
自分達のあずかり知らぬところで、犠牲者が大勢いたという事実に、青龍達は腸が煮えくり返りそうになる。




