ついに対面
時を同じくして、目的地である所長室では、コンピューターで実験経過のデータ入力をしている京介に、青龍と京士郎が刃を向けていた。
「よく来たね。久し振り、青山龍君」
「お久し振りです。敷島博士」
「せっかくこうして再会したんだ。武器を下ろして語り合おうじゃないか。なんなら、コーヒーでも入れようか?」
「お気遣いなく」
自分を殺そうとしている相手に対しても、京介は優しく穏やかな口調で接し、親切にコーヒーを入れようとしている。
その対応に、思わず毒気が抜かれる。
「そうか。まずは謝らせてくれ。彼女を、未来ちゃんを危険な目に遭わせてしまってすまなかった。僕はただ、彼女が側にいてほしかっただけなんだ。そういう点でいえば、僕はまだ子供なのかもしれない」
そう言って、京介は、深々と頭を下げた。
この人は、ただ純粋に研究をし、未来のことを一途に愛してるだけで、根っからの悪人ではないのかもしれない。
そう誤認しかけるが、忘れてはならない。彼は己の野心のためなら、どんな相手でもモルモットにするマッドサイエンティストであるということを。
「その上、大切な研究材料をわざわざ届けに来てくれるとは、本当に有難い。感謝してもしきれないよ」
その言葉で我に返った青龍は、シェンロンスラッシャーを持つ手を握り締めた。
「……訂正してください」
「ん?」
「井川さんのことを『研究材料』と言ったことを訂正してください。彼女は、あなたの実験体である前に、血が通い、心を持った人間なんです。道具扱いしないでください」
強い意思を持って発せられた青龍の言葉に、未来と芹と京士郎も同感だと頷く。
「僕からすれば、サンプル以外何物でもない。僕が理想とする最強の強化人間。それを作る3本の矢の内の1本。それに過ぎない」
「だから、物のように扱う、と?」
未来の問いに、京介は迷わず肯定する。
その返答に、4人は改めて幻滅する。
「変わってないんですね。博士。ちょっとでも親切で、話が通じる相手だと思った僕らがバカでした」
「君は……剣菱京士郎君か。失敗作のまま死んだと聞いていたが、まさか生きていたとはね」
2人の会話を聞いた青龍と未来と芹は、初めて知った事実に驚いた。
そう。京士郎もまた、彼によって不完全なデミ・ミュータントにされた言わば被害者だったのである。
「蘇ったんですよ。地獄の底から」
「そうだったのか。何にしても、こうして戻って来てくれたのは都合がいい。君さえ良ければ、また協力してくれないだろうか? あの頃はまだ未熟だったが、今は違う。君の遺伝子に合った能力をいくつでも与えられるよ」
「お断りします。僕はもう、あの頃の弱かった自分とは違う。そんなものが無くても、強く生きていけます。僕がここに来たのは、あなたを止めるためです」
「そうか。それは残念だ」
彼の言う『残念』が、理解や協力を得られなかったことに対してではなく、サンプルとしていじくらせてもらえないことに対してだということは、この場にいる全員が察していた。




