フラグだってわかってる?
両者が火花を散らし合い、今にも第2ラウンドのゴングがなりそうな空気になる。が、そこに水を差すように、電話の着信音らしき音が鳴った。
「あ、ちょっと待ってね」
鶉は待ったをかけると、ツートーンカラーの三角帽の中から通信機を取り出した。
「もしもし」
「鶉。僕だよ」
通信の相手は京介だった。これまでの様子を廊下に設置されたカメラで見ていたのだ。
「もう、これからが本番だって時に、かけてこないでよー」
「そうは言うけど、本気になった彼が相手では、君も無事では済まない。頼むから、ここは大人しく引き下がってくれ。まだ君を失うわけにはいかないんだ」
「でもー」
「はぁ……わかった。だったら、下の階にいる君のかつての仲間の相手をしてくれないかな? 彼女達なら文句はないだろう?」
不完全燃焼気味で不満タラタラだった鶉は、それを聞いた途端、すっかり機嫌を直した。
「それを早く言ってよー。わかった。すぐ行く」
「頼んだよ。それと、君のやり方をずっと見ていたけど、どうもふざけすぎている。その上、未来ちゃんを殺そうとするなんて、よっぽど僕を怒らせたいみたいだね」
京介としても、鶉のやり方は目に余っていたようだ。通信機から発せられる声に怒気がこもっている。
「ブー、そういう小言は聞きたくなーい。ってか、いつまで初恋の女に執着してんの? いいかげん前向きなよ」
「つべこべ言わずに早く行く。いいね?」
「はーい」
ふてくされながらそう答えた鶉は、通信機を切って帽子の中に戻すと、青龍達の方を向き直った。
「ってわけだからさ。あたしはここらで退散させてもらうよ」
「待て! 逃がさないよ。未来を悲しませた君だけは!」
「それ、逃げられるフラグだってわかって言ってる? じゃあねー、バハハーイ。キャハハハハ!」
終始ペースを握り、ふざけた態度をとり続けた道化は、青龍達に手を振ると、高笑いをしながら自らの影の中へと沈んでいった。
こうなってはもう、どうすることもできない。
ターゲットにこそ入っていないが、あれほどの危険人物を野放しにはしておけない。
いいようにやられっぱなしだった青龍と京士郎は、賢助の遺体に縋って泣き続ける未来を前にして、少女の皮を被ったサイコパスへのリベンジを誓った――――




