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狂気に染まった脳

 数的にはこちらが有利。なのに、鶉の余裕は全く崩れない。


「たった2人で守ろうっての? キャハハ、ウケる! やってみればぁ? 草食系男子達。貴重なサンプルである芹を残して、全員お肉になるのがオチだと思うけどぉ?」


「そうはならないし、させないよ。雷鱗斬!」


「雷神閃っ!」

 草食系男子と揶揄された2人は、躊躇なく雷の如き刃を振るったが、超人的な反応速度で、軽々と避けられてしまう。


「なっ!?」


「てかさぁ、こーんな幼気な女の子に、大の男が2人がかりってダサくない? 死獣神のエースキラーと妖剣士って大したことないんだね」

 トップクラスの剣速を誇る2つの技を容易く回避する反応速度。こんな芸当ができる存在は1つしかない。


「……君も、デミ・ミュータントか」


「おろ? わかっちゃった? 鈍いと思ってたけど、案外鋭いんだねー」

 特段隠すほどのことでもないようだ。鶉はあっさりと認めた。


「ということは、見切りか何かか?」


「ブッブー。ハズレだよオッサン。ダッサー。プププププ」

 予想を外した賢助に対し、腕で✕を作って嘲笑すると、鶉はゆっくりと目を閉じて、意識を集中し始めた。


「あたしが保有してる能力は3つ。さっき避けたのはその内の1つによるものなんだけど、予知とか見切りとかみたいな回避一辺倒のザコ能力じゃない。それよりもっと有能で、もっとデンジャラスな能力――」

 そう言って鶉は、カッと目を見開き、ニタァと笑うと、


「脳内麻薬の能力だよ。そういうわけだから、死んじゃえ! キャハハハハ!」

 と、高笑いしながら、複数のナイフを投げたり、手に持って斬りかかったりした。

 人間離れしたデタラメなスピードと、あり得ない体の動きに、2人は対処に困りつつも、芹達を守りながら紙一重でさばいていく。


「くっ、滅茶苦茶すぎる! けど、あんな動きをしたら、あの子だって!」


「だーかーらー、脳内麻薬のデミ・ミュータントだって言ってんじゃん。エンドルフィンだかドーパミンだかが出まくってて、痛みなんて感じないの」

 つまり、先程、意識を集中させていたのは、人為的に脳内麻薬を過剰に分泌させるための予備動作であり、そうして増やした脳内麻薬で、彼女は身体能力と反射神経の向上や鎮痛作用に用いているのである。


「言うなれば、ドーピングみたいなものってこと?」


「そゆこと。これが京介が初めて手を加えたデミ・ミュータントであるあたしの力だよ。あたしはこの力でいーっぱい人を殺してきたし、いーっぱい色んな物を壊してきた。それはこれからも変わらない。だって、楽しいんだもん!」


「人殺しを、楽しむなっ!」

 京士郎は、怒りに任せて刀を振り下ろしたが、掠りもせず、跳躍からの宙返りで未来達の背後まで逃げられてしまう。


「ほらほら、どこ狙ってんの? もっとよく狙いなよ。鬼さんこちら。手の鳴る方へ」


「こいつ!」


「あ、そーだ」

 鶉は名案を思いついたらしく、手の平をポンと叩くと、青龍達に背を向けて尻を突き出し、その尻を2回叩いた。


「お尻ペンペン。ほーらぁ、ここまでされてその気になんないの? あ、そっかー。あたしを殺すことはもちろん、犯す根性も無いんだー。弱虫君達だもんねー。キャハハハハ!」


「ふざけるなって、言ってるだ――!」

 とっくに堪忍袋の緒が切れている京士郎は、再び斬りかかろうとした。

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