どうしても知りたい!
その動きは、玄関から堂々と突入した彼らも察知していた。
「未来が、5階にある所長室に向かってるって!?」
千里眼で施設内の構造と様子を見ていた黒猫からの報告に、突入メンバーは驚き、呆れ果てる。
「えぇ」
「何をしているんですの? 彼女は!」
「おそらく、彼の悪事を白日の下に晒すための証拠を掴みに行ってるんだと思う。そうすれば、誰も死なずに済むから」
この期に及んでまだ……それだけ未来も必死なのである。
「そういう諦めの悪いとこは、彼女らしいけどね。それで、柚さん。彼女と行動を共にしているのって、本当に瞳と零じゃないの?」
「うん。1人は科学者っぽい人で、もう1人は小3ぐらいの女の子だよ」
未来の判断自体は、一応筋が通っている。それ自体に疑う余地はないが、どうにもキナ臭い。
はたして、その2人は本当に信用できるのだろうか? 監禁されたフリをしてるだけで、実は彼女達が余計なことをしないよう、京介から監視を命じられた彼の部下ではないのか? 疑いだしたらキリがない。
「これは、最低1人は未来さん達のところに急行しないといけないね」
「だったら、僕が行くよ。夫として、妻を守らないと」
いの一番に龍が手を挙げる。すると、それに続くように芹も、
「青山君。私もいい?」
と、申し出た。
「芹! あんた、張り切りすぎや!」
「そうよ。死にたいの?」
龍の時とは違い、全員が危険だと反対するが、芹には芹の考えがある。
「そうなるかもしれないことはわかってる。だけど、あの人にとって私は、やっと生み出したサンプルのはずだから、来るべき時まで命はとらないはず」
「未来さんと同じ手を使うってわけか」
「うん。それに、私は知りたいの! どうして私をデミ・ミュータントにしたのか、どうして私なんかに目をつけたのかを。それを一刻も早く知るためには、青山君と一緒にいた方がいいと思って……」
恐怖と性分のせいか、最後の方は聞き取れなかったが、内気な彼女が、ここまで我を出すのは珍しい。
きっと、並々ならない覚悟があって言ってるに違いない。芹の気持ちを汲み取った龍は同行を許可した。
それでも、彼ほど楽観的ではない仲間達は、芹が最前線に行くことに賛同しかねたが、同じく京介に会って直接確かめたいことがある京士郎が護衛を買って出たことで、話はついた。