敵に回したのが運の尽き
その時だった。下の階から爆発音と振動が伝わり、警報のサイレンがけたたましく鳴り響く。
「何!? 何の音!?」
『緊急連絡! 緊急連絡! 当研究所に侵入者あり! 非戦闘員は地下シェルターに退避。戦闘員は直ちに迎撃せよ!』
スピーカーから聞こえてきた放送を耳にした未来達は確信した。龍達が助けに来てくれた、と。
その証拠に、監禁部屋の鍵も解錠された。大阪空軍訓練所にいるAIこと愛花が、ハッキングで開けてくれたのである。
こうなるともう、怖いものはない。
「零。右の方、よろしく」
「わかった」
短い会話で思考を共有した瞳と零は、見張りの位置を扉越しに確認すると、タイミングを見計らって一気に飛び出した。
「な! 貴様――!」
2人が出てきたことに、見張りのデミ・ミュータントは、慌てて攻撃態勢に入ろうとしたが、1人は、
「遅いっての! 龍神! 落地脚っ!」
天井近くまでジャンプした瞳の十八番とも言える強烈な踵落としでノックアウトされ、もう1人は、
「おっ、なんつーデカ乳――」
「……ゼロ」
と、体を密着させるように抱きついてきた零の豊満な胸に、鼻の下を伸ばしている間に、無の力を注入され、まるで元々いなかったかのように、この世から消滅した。
格闘技の達人と、創世神を捕らえ、敵に回した時点で命運は尽きていたのである。
「OK。もういいよ」
安全を確認した瞳からの合図を受けた未来達は、敵に察知されないよう、静かに部屋から出る。
後は龍とペガサス達と合流して、ここから逃げるのみ。未来も急いで出入口を目指そうとしたが、
「あ、待って!」
何かを思い出した淳が呼び止めた。
「どうしたの?」
「あの、未来さんはできる限り戦わずに解決したいんだよね?」
「うん」
「だったら、一緒に来て! あいつが悪いことをしてる証拠がある部屋を、あたし知ってるの!」
もし、それが本当なら、平和的解決の望みが繋がる。
可能性の低さやリスクは承知の上だが、一縷の望みに賭けることにした未来は、先に脱出するよう瞳達に言い、自分は淳の案内でその部屋に寄ってから、合流することにした。
この決断に宙達からは、『2人だけで本当に大丈夫か?』と、心配されたが、未来と研究に執着している京介が、彼女達に危害を加えるような指示を出すはずがない。その心理を逆手にとれば、やれるはずだと述べた。
「でも……」
「なら、私も同行しよう。女性2人より、ずっとマシだろう?」
できれば、無力な賢助より、瞳か零あたりに護衛してほしいところだが、それでは、科学者達を守りきることができない。他に手がないと考えた美夜と宙は、渋々認めることにした。
ここまで気にかけてくれたのだから、手ぶらで帰るわけにはいかない。必ず証拠を掴むと心に誓った未来は、淳に連れられて、科学者達とは逆方向に駆け出した。




