研究者としての頼み
いずれにしても、このまま京介に任せておくわけにはいかない。師を同じくする者として、賢助は研究存続の危機を募らせていた。
「未来ちゃん頼みがある。君の両親の夢であるデミ・ミュータント開発プロジェクトを再び継いでくれないか?」
知り合いの博士からの唐突な要請に、未来は困惑する。
そうなるのも無理はない。未来は家族との幸せのために、途中で研究を投げ出した人間だ。そんな自分が再び後を継ぐ資格など、とっくの昔に失ったものだと思っていたからだ。
それでも彼は、『君しかいない』と頼み込んだ。そこには、努力だけではどうしても超えられない壁が、彼らにあった。
実は、賢助を始めとする他の研究者達がどれだけ最善を尽くしても、未だに500人に1人の確率で被験者を死なせてしまう。
よしんば、能力を与えることができたとしても、1/4は茅のような不完全さが残り、あとの3/4には1つしか能力をつけることができない。
皮肉にも、複数の能力を持ち、欠陥もないデミ・ミュータントを作り出せるのは、未来と京介しかいないのだ。
「――敷島があのような野心を抱いている以上、複数の能力を持つデミ・ミュータントを完璧に作り、その方法を正しい方法で世に広めることができるのは、未来ちゃんしかいない。君なら我々凡人と違って、強い芯と正義感と思いやりがあるから、野心に惑わされることもないだろう。だから、どうか!」
そう言って、賢助が床に額を擦り付けるように土下座すると、他の科学者達も同じように頭を下げた。
「ちょっ、あんたら勝手すぎ!」
「そうだよ。自分達には誘惑に負けない強い心も、才能もないからって、未来に全部背負わせるなんて、身勝手にも程があるだろ!」
「そのことは重々承知している。研究を託してくれた未来ちゃんの幸せを阻害してしまうことになりかねないことは、正直、心苦しく思っている。それでも、デミ・ミュータントのあり方を正し、人類の発展と幸福を得るためには、こうするしかないんだ。わかってくれ未来ちゃん」
うんと年の離れたの少年少女から非難されても、床に頭をつけたまま頼み込む。恥も外聞もない賢助の姿に、未来の心は揺れ動く。
自分が継ぐことで、両親が目指した世界が実現するなら、と…………




