お仕置き完了
それから約2時間後。昼休みを家族と過ごすことにした未来は、近所の人から澪も娘達も雲雀の店にいると聞き、彼女が経営するお好み焼き屋に向かっていた。
その途中、いつもとは違う【刃物屋 龍】の様子に目が留まった未来は、店内に入るなり首を傾げた。
「龍、大丈夫?」
「あぁ、うん。未来、悪いけどこの包丁、全部抜いてくれる?」
店にある包丁で服を固定され、壁に磔にされた龍は申し訳なさそうに未来に頼んだ。
無論、彼をこんな目に遭わせたのは、彼女達しかいない。
「また、雲雀さんを怒らせたの?」
「うん。ここで柚の性欲発散に付き合ったら、ね。ものっすごい剣幕だったよ。今頃、雲雀の店で真生と果林と一緒に、仲良くご飯でも食べてるんじゃないかな?」
旦那の供述に苦笑しつつも、1本1本丁寧に抜いていき、磔から解放していく。
それが全て済んだところで、ふと、あることに気付いた。
「あれ? そういえば、当の柚さんは? 彼女も何かしらの罰を受けたんでしょ?」
「あぁ、柚なら――」
固定されていた手首を回しながら龍は答えようとしたが、彼より先に、話に割り込んできた八百屋の大将が教えてくれた。
「柚ちゃんなら、上にいるぞ」
「上?」
言われた通り天井を見上げたが、どこにもいない。
「あぁ、違う違う。上ってのは、天井じゃなくて……こっちこっち」
八百屋の大将に手招きされた2人は、それに応じて外に出る。
「ほら。あそこだ」
大将が指差した先を見た未来は、思わず目を丸くした。
雲雀の店と龍の店の間に張られた1本のロープ。そのロープによって、柚が亀甲縛りにされて晒されていたのである。
「よくあんなとこにロープなんか張って、人を吊るせるよな? 大工の親方も言ってたよ。『雲雀ちゃんにこんな技術があるたぁ驚いた。うちで雇いてぇ』ってな」
「確かに、技術はすごいですけど、これでまたスキャンダルになるんじゃ……」
「『今回ばかりはしゃーない』だとさ」
柚も柚なら雲雀も雲雀である。手加減を知らない雲雀の行動に、未来は嘆息を漏らす。