逃げたくない!
彼女の協力を無駄にしないためにも、必ず未来達を救わねば。強敵と目される人物がいないことに、若干キナ臭さを感じるが、二の足を踏んではいられない。
かといって、基地にいる果林達の守りを疎かにするわけにもいかない。そこで、救出部隊と留守番組の2つに部隊を分けることにした。
武文とペガサスと岩尾の協議の結果、救出作戦に参加するメンバーは、龍と雲雀と柚と大牙とペガサスとキララ、それとフローラとルドルフと京士郎と人志と恋と海姉弟。
この13人で、当初は京介のラボに向かう予定だったが、ギリギリのタイミングで自ら志願した者がいた。芹である。
京介らに狙われている彼女が同行することは、自ら身柄を差し出すようなもの。彼の野望を加速させかねないと、全員が猛反対するが、それでも芹は撤回しなかった。
「私、柚さんに言われてやっとわかったの。逃げちゃいけないって。だから、逃げたくない!」
「……勇気を振り絞ったことは、賞賛に値するけど、それは蛮勇よ。勇気と無謀は違う」
「わかってる。だからせめて、サポートに徹しようと思ってる。お願い。力にならせて」
柚の正論にも屈さず、頭を下げる芹に、澪や人志らは同情し、困惑する。危険だから止めたい気持ちはあるが、彼女の気持ちを汲んでやりたいとも思ったからだ。
仲間達の態度が軟化し始めている。一存で決めるわけにはいかないと考えた武文は、判断材料として、親友に尋ねた。
「……龍君。君のことだから、ついてこようとこまいと、彼女を守るつもるなんだろ?」
「あぁ、うん」
「鍛練の成果は?」
「一応、一通りできるようになったよ。30%ほどの力しか発揮できないけど」
その答えを聞いたペガサスと武文は、揃って微笑を浮かべた。
「上出来だ。OK。芹さんもついてきていいよ。どのみち、君にはやってもらわなきゃならないことがあるしね」
「ありがとう!」
許可が下りた芹は、嬉しそうに感謝を告げ、もう1度頭を下げた。
「えぇんかい!?」
「言霊の影響は無きにしも非ずだけどね。まぁでも、うちのナイトが守ると言ってる以上、僕らは信じて支えるだけさ。さ、話はここまで。みんな、そろそろ行こっか」
ペガサスの呼びかけに、大牙らは『おー!』と応え、龍は鉛のように重い得物をグッと握り締める。
どんな強敵や苦難が待ち構えていても、未来と芹を守り切ってみせる。という決意を胸に――――