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穏やかなマッドサイエンティスト

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の最後の戦いを描いた物語。

 時を同じくして、和歌山県某所にあるとあるラボの喫茶スペースでは、眼前にいる白衣を着た優男の話を聞いた未来が、声を荒げていた。


「そんなことのために、これだけのことを……信じられません。敷島さん。こうは思いたくありませんでしたが、あなたは狂っています! 最低最悪のマッドサイエンティストです!」


「自覚しているよ。君のご両親にもそう言われたことがあったからね。僕は紛れもなく、チキンなマッドサイエンティストだ」

 同じジャンルの科学者から、軽蔑の言葉を浴びせられても、否定するどころか素直に認める男。彼こそが、一連の事件の裏にいるマッドサイエンティスト・敷島京介である。

 かつての被験体と研究者、教授の娘と助手。実に数年振りとなる再会だが、京介の目的が目的なだけに、和やかな空気とは言い難い。


「開き直らないでください! こんなこと、お父さん達も望んでいませんし、間違ってます! お願いします敷島さん。研究を中止してください!」


「科学者に向かって研究をやめろと? それがどれほどの苦痛か、未来ちゃんなら理解してるはずだけど?」


「それでも、です」

 未来は毅然とした態度で答えた。

 科学者が研究するのは、我欲ではなく世界と人類のため。たとえ人生をかけた研究であろうと、倫理から外れ、人々を不幸にするようなものなら、即座に修正するかやめるべき。それが、研究者としての未来の信念だからだ。


「そうか。相変わらず、未来ちゃんは真面目で芯が強いね。そういうところは教授とそっくりだし、そんな君だからこそ、僕は惹かれた」


「話を逸らさないでください」


「失礼。だけど、本心だよ。本心だからこそ、本当はこんなことなんてしたくなかった」

 京介は不本意そうに言うと、白衣のポケットからリモコンを取り出して操作し、喫茶スペースへと通じる扉を全て封鎖した。

 それに合わせて、潜んでいたデミ・ミュータント集団も姿を現し、あっという間に退路を絶たれた未来は、驚き戸惑う。


「君の聞き分けがもう少し良ければ、勧誘しようと思ってたんだけど、その様子では応じる気はなさそうだね」


「えぇ。聞かれるまでもありません」


「だったら、仕方ない。君の身柄は拘束させてもらうよ。といっても、通常の捕虜より丁重にもてなすつもりだから、安心してくれ」

 そんなことを言われて、安心できる人間などどこにいる。


「言っておくけど、助けを呼んでも無駄だよ。君の愛する家族とお仲間は今頃、源士郎さんの相手をしているし、賛同しなかった研究者達も既に捕らえてある。1人で来たのが仇となったね」

 運動神経も戦闘力も一般人レベルの彼女では、建物どころかこの部屋から出ることはできない。

 抵抗しても無駄だと悟った未来は、心の中で亡き両親を含めた家族に謝り、彼らの指示に従うことにした――――

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